鬼神-onigami-
劇団☆新幹線 '09秋公演『蛮幽鬼』へ寄せる

黒と白との交わらぬ
幽鬼の如き霊二つ
何処にか在る監獄の
奥の果てしに囚われて

頬を濡らすはくれないに
染まりて流る血涙か
それとも尽きせぬ憎悪ゆえ
憤怒に溢る人の血か

未来を忘れ心を殺し
涙の代わりに血を流し
恨みも呪いも哀しみさえも
復讐絵蒔の檻の内

白き鬼は高らかに
昏き鬼は虚ろに
明けぬ真闇にから嗤い
二つの魂呑み喰らう

牙を楔に 爪桎梏に
昏く 深く 抉るように

嗚呼光閉ざす格子さえ
彼の其の手を阻まなければ
伸ばした指は君の手絡め
決して離しはしなかった

移ろう時も人の心も
すべては鎖され過去の底
結ばれぬ眼差し 君喚び止まぬ声
名も無き祈りは朽ちてゆく

神なきうつつ遠離り
夢、まぼろしはもう幽か
濡れて輝く闇色の
復讐の鬼が神と成る

   ――『 一 心 蛮 在 』
神亡き男のその胸に――