逝佳封陣


この剣が折れても お前を守るつもりだった
永い 永い時を 共に過ごしてきたお前を
誰からも 何からも 守り続けるつもりだった

目の前の闇に お前はいない
気配すら……掴めないまま
何かを探して手を伸ばしても
触れるのはただ漆黒 …漆黒のみ


この瞳を失くしても お前と生きるつもりだった
遠い 遠い昔に 巡り会ったお前と
永遠に 久遠に 生き続けるつもりだった

瞳を開けても何も見えない
影すらも……認められずに
お前を想って瞼を閉じても
映るのはただ紅 …紅のみ


『剣を振るい技を連ね お前の進む路を照らして
 言葉を重ね心包んで 支えてゆくつもりだった』


私がいなければ 私でなければ
誰がお前の傷を癒せる?
お前がいなければ お前でなければ
どうして私が生き続けよう!


この場所から動けずに すべて閉ざされたまま
 (この腕にかき抱いて 決して離さずに)

お前のことのみを 念(おも)い続けて
 (瞳交わし言葉交わし 永久に時を過ごす)

これから私は 無限に虚を彷徨うのか
 (愛しい子よ 私と共に…)


お前を守ると誓ったはずが
いつしかお前に心守られ
人は互いに支え合うものだと
お前を知って 初めて理解(わか)った


失ったものはお前だけでなく
積み重ねた思い出すべてなのだ
幾度呼んでも どんなに追っても
戻らない 戻れない 決して……決して!


せめて今は願い祈ろう
月の光が 陽の恵みが
必ずお前を守らんことを
たとえ私を忘れても良い
お前の未来に幸多かれと


 たった一つの約束も果たせなかったお前に
          すべての愛する気持ちを贈る…