吸血鬼とは  黒好きゆえの… <2>


 前回の語りから3年。悪魔城ドラキュラXという何ともクリーンヒットなゲームにも出会ったことだし、改めて語るとしよう。吸血鬼について。
 最初に、彼らの呼び名についてちょっと触れておこう。「Vampire」の由来については前回も触れたが、他にも「ノスフェラトゥ」と言う呼び名がある。これは「不死なるもの」という意味で、こっちの発祥は今ひとつわからん。が、確かにまぁ不死なるものではある。他にもヴァンパイアの発展系で「ヴァンピール」「ダンピール」などとあるが、結局同一のもの。地域によって認識に誤差はあるが。

 さて、本題。吸血鬼フリークらしく、私には理想の吸血鬼像と言うものがある。1.美形であること(私の美の基準は、長髪・細身・外見年齢25〜だ)、2.髪の色は黒・もしくは金か銀であること、3.凄惨な影があること、4.聡明であること、5.強いこと、6.黒いこと、である。内四つ以上満たせばまぁ合格、大抵ヒット…なのだが、それが意外なことになかなか無い。今まで気に入った吸血鬼と言うと「悪魔城ドラキュラX」アルカード、「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のレスタト、「ウィザードリィ・サガ」のギルバルス…くらいである。大抵、ヴァンパイアなんてものは作者の理想なりイメージなりの創造物だから、似たり寄ったりでも色々と特徴があって個体差もあって当然なんだが。しかしながら、大体において吸血鬼の起源はファンタジー世界では無い。前回も触れたが、中世ヨーロッパである。青髪緑髪の吸血鬼なんて居てたまるかい。それとも吸血鬼も髪染めるのか?別に染めたって良いけどさ。まぁそんなわけなので、一般にファンタジー小説と分類されるものに吸血鬼がそれほど出てこないのは、いわば当たり前なのである。彼らは元々、ファンタジーの住人では無いのだから。しかしファンタジーって枠もいい加減だよな。ジャンルとして確率されてんのか?

 しかし現実世界の裏側から生まれた彼らでありながら、これがゲームとなると一転、モンスターとして扱われる。モンスターという枠に「人間以外のもの」って意味合いがあるので、エルフなりホビットなりと一緒に彼らがモンスター扱いされてるのは良いとしよう。かの有名な「モンスター!モンスター!!」でさえそうだしな。問題はそれどころじゃない。最初は単なる顔の良い敵役として出てきても、多段階変形した挙げ句目が飛び出たり六つになったり、四つ足になったり骨の翼が生えたり、火吐かされたりと散々である。しかもストーリーの都合上、変身前より弱かったりする。(何故かって、連戦になるから。しかも勝たないと進めないから。)これでは彼らが可哀想じゃないか!! そんなわけで、誰か私の理想の吸血鬼でゲームなり物語なり作ってくれ。変形ナシで。個人的には悪魔城ドラキュラX〜月下の夜想曲〜なんだけどな。吸血鬼のトランスフォーム能力(狼・蝙蝠・霧)もちゃんと満たしてるし。しかしこのアルカード、椅子に座らせてしばらく放っておくと、寝息立てて居眠り始めよる。敵の居城で寝るなよ、闇の貴公子が。
 まぁ正直なところ、私は世間一般の吸血鬼認識がどうなろうと知ったこっちゃ無いのだ。が、明らかに勘違いしているのを見ると、光の速さで突っ込みを入れたくなる。ヨーロッパの逸話から生まれた(しつこい)とは言え、元々は想像上のものだろうし、色々と脚色されるのもアリなのだろうが。それでもやっぱり彼らには闇の貴公子であって欲しいと思う。

 ところでヴァンパイアにも格付けがあるのは御存知だろうか。強さではない、ランクである。まず第一に、最初に血を吸うヴァンパイアが存在する(当たり前)。それに血を吸われた第二の吸血鬼は、自分で思考する能力を持ちながら、第一の吸血鬼の命令に絶対服従という弱みがある。そしてその第二の吸血鬼に血を吸われた第三の吸血鬼、これを一般にグール(≒食人鬼)と呼ぶのである。ちなみにこのグール。ゾンビと外見はほぼ等しいのだが、実は全然違う。ゾンビと言うのは死者がよみがえったものを指すが、グールは精神は生きながら肉体は死んでいるのである。ゾンビに明確な意志は存在しないが、グールには存在する。ちなみに強さも桁違いだ。余談だが、ゾンビを燃やすとスケルトンになるが、グールが燃えて肉が焼け落ちるとスケルトン・リブ(=live=生)となる。こちらも外見はスケルトンと同じでありながら、強さは段違いだ。話がそれたが、そんなわけで吸血鬼にも格があるのである。

 吸血鬼は奪った血の代わりに自分の血を流し込む。それによって対象の強さ、吸血鬼化の度合いが変わるのだという。(そう言えば、GURPSというTRPGのルールには、吸血鬼に何度血を吸われたかによって、プレイヤーの吸血鬼化の度合いが変わるというものがあった。それもまぁ、間違ってはいないと思う。)それなら彼らには血が流れているのだろうか
 私は元来、彼らには血が無いものと思っている。彼らの身体は空洞なのだ。(何で動けるのかって? だから彼らはモンスターに分類されるんだよ)彼らの犬歯はコブラの毒腺みたいなものなんじゃ無いだろうか。と言うのが勝手な予想だったりする。自分の血を流し込むと書いたが、流し込むのは多分毒と言うか、精神力みたいなものなんだろう。

 「夜明けのヴァンパイア」(アン・ライス著)に一つのシーンがある。クローディアとルイが、共謀してレスタトを滅ぼそうとするシーン。
 少年一人分の血を飲み干し、毒によって朦朧としたレスタトを刺し貫くルイ。何度も、何度も…。溢れ、流れて床を満たす鮮血。しかしそれはレスタトのものではない。たった今、飲み干した少年のものなのだ。

 彼らに自分の血は存在しない。ならば、その内に流れるものは何か。
 である。である。ゆえに彼らは魔性と称せられるのだ。その存在が、姿が、いかに美しくあろうとも。そしてそれゆえ、私は彼らに惹かれるのだ。例えそれが禁じられた美であったとしても。