2003年3月
Next>>

2003.3.5(Wed)

徒然に。
言の葉の誘うままに。

書き留める。

記憶の綴りを。



2003.3.7(Fri)

…ふと。
仕えるだけの価値がある、そんな主と出会ってみたいと思う。

例えばその根底にあるものが、狂気であろうと。
例えば目指すものが、創造でなく破壊であろうと。

魅力を感じるだけの主と、出会ってみたいと思う。

…黒き島は…
堕ちるやも、知れん。



2003.3.7(Fri)

「たった一つのことでも良いから、誇りの持てる生き方を」


言葉の傷みと、癒しと。
人の温かさと、冷たさと。

そんなことを思ってみる。
思いの外、俺は人の近くにいるものだと…

文字を連ねつつ、少しばかり苦笑。

まだ俺の炎は消えない。



2003.3.9(Sun)

「紡ぐことと、返すこと。」


詩歌を、言霊を紡ぐようになって
どれだけの月日が過ぎたろう。
言の葉の持つ力を、改めて思い知らされずには居れない…
そんな日々。
言霊使いは、言葉の恐ろしさも知るべきだと。
見えぬがゆえに奥深く突き刺さるそれを、知るべきだと。

…身を以て思い知ったのは…
いつの日だろうか。


最近、何処へ行っても疲労が見えない人は居ない。
自分自身、そうなのだろうと思う。
けれど…
それでも。

自らが得た安らぎを、癒しを。
等しく、返したい。
可能な限りに。

…貴方は…受け取ってくれるだろうか?



2003.3.10(Mon)

「彩華、ひとひら。」


思いがけぬ方から、思いがけず頂き物。
礼を言うのも感謝の言葉を贈るのも
不慣れな自分がもどかしく。
そして等しく、感謝されるのも苦手なのだと気付き。
それほどまでに、人と関わらぬ時間が長かったのだろうか。
不慣れになるほどに。
忘れるほどに?


いつしか
まことの言の葉を詩歌にして紡ぐ事に慣れすぎていた。
そう気付くまでに時間はかからず。

ならば、自らの真情を伝えるものとして…
紡ぎ続けよう。
闇の焔の奏でる詩歌を。



2003.3.11(Tue)

「逆炎−さかほむら−。」


ありもせぬ言葉を紡いでみる。
無かった言葉を創ってみる。
それが自らの思惑と合えば、至上。
合わねばまた一つ…
新たな言葉が増えるだけ。


似合いもせぬのに菓子なんぞを作ってみれば、存外好評なのが不思議なほど。
けれど今一つ満足が行かないのは…
間違いなく、自分の気質の所為。
…今はただ、その意外性を自嘲。


見えぬもの、隠れるもの。
この地の下で、燃え盛る。
逆炎よ、汝は今…?



2003.3.12(Wed)

「黒きへ堕ちて 狂気と踊れ。」


…動き出す。
過ごしてきた悠久の時と等しく…
ゆるやかに、けれど瞬く間に。

俺は何をすべきだろうか?
俺は何を求めるべきか?

…魔島の空へ望むものは、遠く。

俺は…俺で、在りたいだけ。



2003.3.13(Thu)

「停滞と安寧よりも混沌と流転たれ。」


旅への誘いは唐突。
その衝動に負けるも一興。
混乱を娯しむもまた。
けれど俺が選んだのは…
混沌よりも、未明なる自由。

退屈な言霊に縛られても尚、炎は尽きず。
窮屈な檻を焼き尽くすがごとく、外世への思慕が募り。

…俺は俺の望む路を往く。

例え、そのためにこの身が灰となろうと。



2003.3.14(Fri)

「夜毎の死より目醒め。」


同胞の居る地へ、一歩…また一歩。
一昼夜明けるごとに。
其は期待するように鮮やかな場所だろうか?
其は危惧するように静か過ぎる場所だろうか?
すべては目にするまで、判らぬこと。

だから今は…
躊躇わずに、進む。

邪炎を胸に。



2003.3.15(Sat)

「咲き急ぐ花、散り急ぐ華。」


愛おしいと思うもののために…
力になれぬのは口惜しい。
支えられればと思うもののために…

俺はまた、誰かが朽ちるのを目の前で見守らなければならないのだろうか?
力になれぬ悔しさを憤りを、また感じねばならぬのだろうか?
それを拒み続けて、今まで。
一人、闇を過ごしてきたというのに。

言葉のみ連ねても、残るのは空しさ。
願わくば。
人が炎を見つめ、沈思によって落ち着きを取り戻すように。
俺の黒き炎もまた…何者かの糧にならんことを。


…薄れかけた、主の幻影を、惜しみつつ。
闇焔よ、静寂の安らぎを。



2003.3.16(Sun)

「傍に在れ。それのみが救う事もある。」


近付いた分だけ、遠く感じる。
見えぬものを知る。
そして傷みをも。

其処に触れる指先はちりちりと…
この胸に小さな痕を刻むけれど。

その感覚は存在する証。

陽炎のように。
言霊のように。

…俺は此処に居る。

望めば手に入る場所に。



2003.3.17(Mon)

「鴻鵠の志、燕雀に通じず。」


異国の地より、櫻一枝。
闇焔も華を咲かすか、と…一人ごちては。
早咲きの一華に魅入る。

人が朽ちて果てる道は何処にも無い。
空へと昇る道のみが。


…亡き者は。

言霊を遺して、往く。



2003.3.18(Tue)

「雲の如く生き
 水の如く歩み
 風の如く去る」


人の印象のまま描かれるは、それなりに嬉しい。
その印象が自分と一致していれば、尚のこと。

…けれど。

過ぎた思慕を過去のものと笑えるには、日が浅く。
思いの外遺った傷みが深かったと思わざるを得ず。
そんな自分が、厭わしい。


喉の奥が締め付けられるような。
胸の奥が疼くような。

そんな感情が、厭わしい。



2003.3.19(Wed)

「二律背反」


目の前でただ、朽ちて行くを見守ること。
知らぬ場所で朽ち果て、その最期を話にのみ聞くこと。
俺は一体、どちらを望むのだろうか。

その答えは…
旅の空を選んだ時に、もう。

けれど野望も策謀も尽きることは無く、
歯痒き思いで空へと至る道を眺め、
その遠さにまた、地を這い戻り。

願うのは
真なる混沌。
純粋なる、悪の華。



2003.3.20(Thu)

「微睡みの 往く末延べて 墨炎」


世界が揺れる。

未だ確立せぬままの足場は脆く
その上に立つ者たちの心さえ巻き込んで
ただ、崩れ行くけれど。

例えそれが混沌と呼ばれようと
堕落と頽廃は俺の求めるものでは無い。

その胸にある理想を掲げるが良い。
高く。
高く。


倦怠を生ずる光の朽ちるまで
俺の炎よ、墨色に染まれ。

愛しき闇に融けて
今は黒き死を貪ろう。



2003.3.22(Sat)

「詠み人知らず」


…世界の破綻の

…響(こえ)、遠く

…華(ひら)いて散るは

…禍き夢

…或いは幻

…はた 現。



2003.3.23(Sun)

「堕ちた華は咲かず。」


腐り果てた枝に縋り付き
共に朽ち果てること。
枝を離れ地に落ちて
独り枯れ朽ちること。

落ちゆける華をせめて、受け止めようと
差し伸べたこの腕が届かぬのであれば。

その花朶を汚した土をせめて、払おうと
伸ばした指先さえ届かぬのであれば。

…この身の黒き焔は。
…彼の国にては、うたかた。


世界を異にする者たちよ。
言霊の契りのみにて互いを識る
彩り多き者たちよ。

此へ来れ。集え。
この俺の。
言の葉の無力を嘲笑うが良い。



2003.3.24(Mon)

「闇に音、のみを聞く。」


繰り返し繰り返し、呟くは
自らを納得させる為だと言う。

この暗きの内で。

幾度も…幾度も。

たった一日とて、忘れたことは無かったと
その証を立てられれば。
告げられればどんなにか。

…けれど。

無音のまま消えゆくを選択されたのならば。

この記憶のみただ、胸に抱いて
薄れゆくまで…


我が主よ。
詐称たる契約を結びし、主よ。

…願わくば…

その名を記憶に留め置くを、赦し給…



2003.3.25(Tue)

「届かぬ声。」


陽炎に手を伸ばし引き留められるなら。
泡沫に呼びかけて留め置けるのならば。
引き裂かれるほどに手を伸ばし、
声嗄れるまでに叫ぼうものを。

ふと気付けばその姿は無く
その影のみが。

どうにも出来ぬと理解るがゆえに
傍らに在った一時が哀しい。

失うを怖れ涙するを否定し人の輪より遠ざかる
自らの弱さと卑劣さに自嘲しつつも
…また……ひとつ。

愛おしきが消え去るを、甘受する。



2003.3.26(Wed)

「黒に詠う。」


極稀に。
人恋しくて。
時折、刹那くて。

誰でも良い、その温かさを。
その存在を固く、抱き締めたくなる。


墨炎の吐く、溜息は…
闇に融けて、涙色に煙る。



2003.3.27(Thu)

「余焔。」

人は言う。
火精が寒さを感じることはないのだと。
自らが纏うその炎があるために。

けれど俺の炎は瞳に封じられ。

更に言う。
炎なくとも寒さは感じぬのだろうと。
自らの熱は絶えることが無いと。

けれどその熱があるために
俺は冷を、常人より遙かに冷と識る。

微かなる冷たさは忘れることが出来ようとも
時折耐え切れぬはこの胸より生まれ出ずる…

自らの炎にこの身が尽きそうになれば
人形をくべて代わりと為し。

それが出来ねば…


…あぁ。

延べられた手はあまりにも温かく
その優しさに縋りたくなるけれど。

引き寄せ抱き締めて壊してしまいそうな
その衝動が恐ろしい。



2003.3.28(Fri)

「揺らめいて。」


倒れかけた手の内にあったものは小さき存在。
伸ばした指先を掠めたのは強靭なる意思。

その存在に、改めて自己を感じる。


この腕に抱かれた小さきものよ。

異国の地にて、遊予為す粋人よ。

此度俺の感じた安らぎが
等しく、あなた方の上にあるように。


揺らめいて。
揺らめいて。

…炎よ。甦れ。



2003.3.29(Sat)

「光負わぬ影は影に非ず。影宿さぬ光は光に非ず。」


『待つ』と…
その答えのみを胸に留めて地へ出ずる。

久しく見ていなかった魔島の月は
白く、透き通り。

懐かしき喧噪に巻き込まれつつも
惚れた相手と硝子杯に葡萄酒。

未だ花は開かねど
その一時を華宴と思う。

…ただ、心地佳く。

忌まわしき陽の光も宴と想えば
肩並べ歩むこの身もまた

………

華宴 錦の綾に 彩を得て
 夢幻の色に 墨ぞ染まるる



2003.3.30(Sun)

「時紡」


閑散とした塔の一間が寂しくて
ただ静かなる時に浸りたくて
外出を躊躇っている内に時は過ぎ。
結局、またの機会を…と。


衣の柔らかな香に一人沈み
今宵は普段より少し早い微睡みを。

…夢見に浮かぶ名は
未だ知られぬ…



2003.3.31(Mon)

「爪月の夜に。」


一つ、魂が消えることと。
あの月が破鏡となる日が同じとは
…皮肉なことに。

言の葉を形創れぬほどの
こんな夜は
そのまま眠りに落ちてしまおう。

…宴の後の静けさが
思いの外、心地良いから。



Next>>