題詠100首 2009 より 自詠100首(1-50)
(001〜050 , 051〜100

001: 笑
ねえ貴方、笑って下さい そうしたら、私も屹度笑えますから
002: 一日
一日の生を尽くして君を恋う 夜毎の眠り死と呼ぶ君を
003: 助
今は未だ姿も識らぬ侘助の見(まみ)えぬ彩を君と重ねて
004: ひだまり
雪に落ち蕾開かぬ花の芽を僕のこころのひだまりに置く
005: 調
見上げては零す吐息の糸を寄せ弓張る月の調弦の妙
006: 水玉
浴槽へ落とす嘆きを混ぜ合わせ指で繋げた壁の水玉
007: ランチ
木漏れ日に愛想も見せぬわたくしの冷たい影と二人のランチ
008: 飾
言霊の皮も血肉も削ぎ落とし飾らぬ骨の如何に愛しき
009: ふわふわ
胸の内融けゆく君の声はして一人溺れる ふわふわふ、わ
010: 街
街路樹の影だけ君の形して、溢れた其の名を殺す 「さよなら」
011: 嫉妬
凛と立つ君の孤独に嫉妬する 声にならない、恋にもなれない
012: 達
紅白の色のみ切なに眩しくて未だ我見ぬ達磨の双眸
013: カタカナ
照れながら「アリガト」何ンて君の声 カタカナ言葉のぎこちなさが好き
014: 煮
遠離る君へと向かう憎しみは煮ても焼いても食えない絆
015: 型
誰も皆型に嵌った生き方してさ、分かったような事を言ってさ
016:U ターン
文字ばかり吐息の如くに紡ぎ生き行き詰まってはUターンの路地
017: 解
ユキノシタ浮かべて凍る蜜蝋の雪解け待たず綴る一筆
018: 格差
手土産も持たずに巡る古都の旅 格差を騙る隣人も無く
019: ノート
会いたくて恋をしたくて詩(うた)を書く 十年遅れの青春ノート
020: 貧
君泣くに冷めて佇む吾が胸の心は貧し空ろの仮面
021: くちばし
風乞うと反らすくちばし艶(つや)めかし 濡れて地を撲つ白磁の翼
022: 職
摩天楼凍てる狭間に立ち竦む 如何なる職も空に遠くて
023: シャツ
ちりばめる砕けた硝子 少女の眼 踊る紅シャツに滴る
024: 天ぷら
積乱の衣ばかりなる天頂に天ぷら油をぶちまけてゆけ
025: 氷
酔いの果て歪む現に融け切れず薄氷の舟一人たゆたう
026: コンビニ
夜を侵し彷徨う子らを捕食するコンビニエンスストアの白闇
027: 既
魂魄の既に無しとは識りつつも温めて動かぬ君の屍
028: 透明
透明で 嗚呼あまりにも透明で 涙は切なく空貫ける
029: くしゃくしゃ
青白き煙も骨もくしゃくしゃに抱(いだ)いて気付く 距離無き魂
030: 牛
光曳く殻の秘を以て懺悔在る 蝸牛のごとく涙乞い乍ら
031: てっぺん
不如帰待つ人も無く忍音の『てっぺんかけたか』山中に棄て
032: 世界
微笑みも 澄む眼差しも肩を越す キミが両眸に宿す世界は
033: 冠
吾が頬を伝いし涙 往く君は知らずに抱け 屍(かばね)の桂冠
034: 序
別たれるひとときのみにふと過ぎる 『来世で逢おう』絆の序文が
035: ロンドン
霧の街 ビッグベンにも興向かず 名のみ紙面に泳ぐロンドン
036: 意図
忘れずに、思い出さずに居てください 君へ捧げたやさしさの意図
037: 藤
影染めて霊集い来し藤色の哀しみばかり生きて居る
038:→
君に宛て砂に刻んだメッセージ 恋→愛→君→ 僕の居る場所
039: 広
夜ほどに安らぐ刹那の広さ無き 机上乱れて荒野にひとり
040: すみれ
秋の辺にすみれはぐれて狂い咲く 手折り奪おか 惑う高貴を
041: 越
虹向こう彼方にぞある父の背の 越えてもみたし 越えるも哀し
042: クリック
愛しさも憎悪も別れも何もかも たった一度のクリックだけで
043: 係
戦火に玉散り果てて君の在る信頼係数僅かに低し
044: わさび
君知らぬ涙脆さの言い訳に嫌いなわさび口にしてみる
045: 幕
連れ添いの暁闇初めて光刺す 君の幕間見てしまいたる
046: 常識
誰も皆疑うことなき常識の澄ました横面殴りたくなる
047: 警
傷口を閉じても溢る洪水の警報止まず 『おまえのせいだ』…
048: 逢
結ばれぬ縁の幾度巡り来る 夜毎逢瀬を重ねても尚
049: ソムリエ
禁断のソムリエナイフ閃かし吾の封解く 毒も呑み干せ
050: 災
むず痒き災い来たりて胸を刺す 汝が形に居残る残滓
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

五十嵐きよみ 様の主催されている『題詠100首Blog 2009』に参加させて頂いた際の作品です。
私自身のBlogへ掲載していたものを、此処へ転載しております。

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