題詠100首 2009 より 自詠100首(51-100)
001〜050 , 051〜100)

051: 言い訳
寂しさの気紛らわしでないのならせめて言い訳聞かせて欲しい
052: 縄
僕の手は君の指先包み込み 縛す縄にも継ぐ楔にも
053: 妊娠
照れつつの妊娠を聞く また一人船出を見送る心地にて居る
054: 首
咎晒し首啄まれ骸啼く 包む帷を露と濡らして
055: 式
祖の厄を代わりに受くる式神(しき)となり 愛(かな)し子守れよ少女人形
056: アドレス
アドレスも着信履歴も消せやしない 良くある話、だけど真実
057: 縁
蜘蛛糸の縁一筋指絡め 手繰りて寄せる夜蝶の軌跡
058: 魔法
魔法より呪詛にも近き言霊の三十一色夜を彩る
059: 済
大切に詠み来し筈の五十九に朱線走らす「済」の一筆
060: 引退
瞬ける少女の目をした老婆より引退遠き我でありたい
061: ピンク
懈怠めく夜に腐乱した肉色の淡きピンクに死を埋めてゆく
062: 坂
留まれば旅振り返る坂の常 終わりも見えぬ気配の内に
063: ゆらり
大河にも沈まぬひかり原爆の碑透かしゆらりたゆたう
064: 宮
今際の日彼の月の宮夢見つつ 衛星「かぐや」天へと墜つる
065: 選挙
当落の手段と目的履き違え選挙公約その名も虚し
066: 角
「まァだだよ」影に潜りて角隠す ほくそ笑む子ら鬼の笑顔で
067: フルート
ひだまりにフルート溶かし春陽の奏でる無音 物言わぬ幸
068: 秋刀魚
七輪と秋刀魚のような相性で焦がれています 今食べ頃です
069: 隅
確かめて空の片隅押しやりし筈のかなしみ如何に零れる
070:CD
傷付くと歌えなくなりますCDのような七色放つあなたは
071: 痩
注ぐのは愛の名をした願いのみ叶わず白く痩せゆくいのち
072: 瀬戸
引き攣れた傷跡遺し甦る冷たき手繋ぐ瀬戸際の闇
073: マスク
またひとり判った風に笑うのね 甘いマスクも白けて見える
074: 肩
ギター背負う肩胛骨のそのあたり 翼はあるよ 『Rock』と言う名だ
075: おまけ
おまけなど要らないのですただひとり混じり気のないあなたが欲しい
076: 住
たゆみ無く筆奔らせる情動の我が背(せな)に住む 飼い殺されて
077: 屑
夜の内に氷雨は月の子らを射て ほら芝生にも星屑が散る
078: アンコール
君眠る大地に響けアンコール 一日(ひとひ)の生を亡者と踊る
079: 恥
胸を突く言葉も尽きて蘭引に注ぐ我が恥道化の滴
080: 午後
苛々も空ゆく雲に蕩かして 君路へ通おう微睡みの午後
081: 早
我にとり夢も現も早足に過ぎゆく逢魔 刹那き薄暮
082: 源
今はもう触れ得ぬ想い閉じこめた遠き桃源どうか絶えるな
083: 憂鬱
涙雨刹那の隙を埋めてゆく きみとわたしと空の憂鬱
084: 河
山が魅し河面へ揺らぐ錦彩に 天の白妙染まりてぞゆく
085: クリスマス
想い出の行き過ぎし後クリスマスカラーで結ぶ君の笑顔も
086: 符
君のない世界へ空いたあの虚無と符合し嗤うわたくしの影
087: 気分
月甘き夜の湯船に一人酒 今だけわたし気分上々
088: 編
艶かなる黒髪編める母の指 耳朶を擽るかさつき愛し
089: テスト
わたくしの心はどこまで壊れるかテスト中です 放っておいて
090: 長
秋風吹く長し夜な夜な存えば熟れる寂寥涙と実る
091: 冬
冬枯れる舗道の木立人気無く都会の肋からからと鳴る
092: 夕焼け
夜のごと深き貴方に落ちてゆく 夕焼け色に染まるわたしが
093: 鼻
鼻先へ幸福乗せてキスしよう 二人笑顔であれますように
094: 彼方
海標 連なる星の色をして 彼方へ光る君の言霊
095: 卓
干涸らびる我と我が身を切り刻み言霊搾る神の食卓
096: マイナス
雲隠れにし月の面嘆きつつ鈍色に降るマイナス記号
097: 断
ぬばたまの夜を断つ風は透き通り暁に処すわれの断罪
098: 電気
直に皆電気仕掛けの恋になる 見えぬ距離を電文が埋め
099: 戻
己と云う人の檻より放たれて空往く言葉何処へ戻る
100: 好
言の葉に好意紛らせ君遠く愛せぬ距離も我が歌の糧
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

五十嵐きよみ 様の主催されている『題詠100首Blog 2009』に参加させて頂いた際の作品です。
私自身のBlogへ掲載していたものを、此処へ転載しております。

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