劇団新感線 吉原御免状    観劇レポートもどき(前編)

2005.09.20 劇団☆新感線 吉原御免状(青山劇場 18:00〜 公演)
※微妙なネタバレ注意!

 新感線としては初の、原作あり舞台。
 原作は「花の慶次」や「影武者徳川家康」で有名(?)な、隆慶一郎氏の「吉原御免状」ということで…
 同氏の作品好きな私としては非常に楽しみにしていたのです。

 そんなわけで、2005年9月20日。平日にも関わらず、行ってきました…劇団☆新感線『吉原御免状』! 


●まずは導入
 時は明暦三年、八月十四日。
 江戸・浅草日本橋付近。
 公儀よりその存在を赦された「御免色里」・吉原では祝いの日を迎えていた。
 しかし、きらびやかな灯りと喧噪の裏側で、密かにうごめく怪しげな影。
 亡き徳川家康公より賜った「吉原御免状」を狙う、裏の世界の者たちであった。

 奇しくもその日、吉原を訪れる旅姿の青年が一人。
 師・宮本武蔵に拾われて育てられたという彼は、己自身の出生の秘密と共に、吉原を巡る争いに巻き込まれていく…


●開演前
 いやはや…何だかもう、席に着いた時点で、筆を走らせるのももどかしいくらい高揚しておりました。
 何せあの隆慶一郎氏の原作、そしてそれを新感線が!…ということで、本当に本当に楽しみだったのですよ。
 同氏の作品は、原哲夫氏が漫画化した「花の慶次」に見られるように、各々のキャラクターが非常に個性豊かで面白いのです。
 そう言う意味でも、新感線向きの素材だったのではないでしょうか。

 さて、そんなところで…主要(ぽぃ)配役を軽く。(敬称略)
 蛇足ながら、私が原作を読んで持っていたイメージを、覚えている範囲で…

・松永誠一郎 ― 堤真一
 言わずとしれた主人公。
 頭の中にある原作のイメージでは、非常に爽やかな青年なのですが…
 不思議な魅力を持った人なのですよ。

・勝山太夫 ― 松雪泰子
 結構悲劇的な役所だったような。
 酸いも甘いも…というわけではないですが、色々と複雑な情を持ったお人だったような気がします。

・柳生義仙 ― 古田新太
 ありゃ…また悪役ですか。好きですねぇ(笑)
 悪の親玉だった気がします。

・水野十郎左衛門 ― 梶原善
 イマイチ記憶が…確か吉原で絡む旗本奴の頭目?だったような…?

・高尾太夫 ― 京野ことみ
 勝山太夫と対を為す存在だったような。
 吉原で一番人気の太夫です。

・柳生宗冬 ― 橋本じゅん
 柳生義仙の兄…だったかな?
 お、古田氏とコンビですか。何かやらかしてくれるのでしょうか…

・八百比丘尼 ― 高田聖子
 伝説では、人魚の肉を食って不老不死になったとか。
 名前の通り八百年生きてる尼…とされますが……うわぁ、聖子さんですか。ぴったりです。

・狭川新左衛門 ― 粟根まこと
 また微妙な役所を…
 参謀というよりは、使いっ走りな脇役、という感じだったような…
 腹黒いです。


 うぅむ…さすがに配役は見事ですね。
 特に高田聖子さんの八百比丘尼は…
 高尾太夫辺りかなぁ、と思っていたのですが、よく考えればこれ以上に適した役所はありませんねぇ。

 色々書き殴ってほどよくテンションが収まってきたところで、そろそろ開演です。
 さぁて、どんな舞台になるのやら…!


●本編
 やっぱりセオリー通り、微妙な立ち回りから始まる舞台…導入部分って結構苦労するのですよね。
 などと思って見ていたら…
 って、おぉ、粟根さんと川原さんの声がっ! …と思えど、覆面してて見当が尽きません。がっかり…
 どうやら、「神君御免状」なるものを探している柳生一派の人のようです…ふむ。

 そこへ通りかかる、旅姿の松永誠一郎。
 狭川新左衛門率いる柳生の刺客をアッサリ四人切って倒し……って、ちょっと強すぎやしませんか。いくら何でも(笑)
 誠一郎の強さに泡を食って柳生一派が逃げ出したところへ、通りかかった謎の老人(藤村俊二氏)。
 四人斬ったと言う誠一郎に、夢でも見たんじゃないかと笑う謎の老人。
 イマイチ納得がいかない様子のまま、それでも気を取り直して吉原はどこかと訪ねる誠一郎に、すぐ近くだと返して、老人は続けます。

「吉原はこの世の極楽…そしてね、地獄だよ」

 言い残して忽然と消える老人を追って(探して?)誠一郎も吉原へ…


 …うぅん。イマイチ誠一郎の爽やかさが足りないような…いや、でも、こんなのもアリですかねぇ。山育ちらしいワイルドさは結構出てると思いました。
 謎の老人(幻斎)の藤村俊二氏はさすがですねぇ。飄々としたその佇まい、愛嬌のある動き。適役としか言いようがありませんが…
 でもちょっと鋭さが足りないかな、とか思ってしまったり。
 まぁ、原作のイメージはどうあれ、舞台全体の中で違和感が無ければそれで良いのです。問題なし。


 そしてたどり着く、吉原の町。
 回り舞台に…人の多さに…きらびやかな灯り、そして舞台中央から、男衆侍らせつゆるりと歩み降りてくる太夫一人。傍らの提灯には「高尾」の名。
 そしてそれと相対するかのように、花道より現れる勝山太夫。
 この二人、「花魁」も知らずとスタスタ歩いてゆく誠一郎を取り合っていきなり火花散らしてくれます。
 真ん中でおろおろしてる誠一郎に、ええい朴念仁め!とか思いつつ(笑)…木訥な様子は微笑ましかったです。  そんな一騒動が済んで、絡んでくる旗本奴衆。水野十郎左衛門を筆頭に、喧嘩っ早いことこの上ありません。火事と喧嘩は江戸の華とか言いますしねぇ。
 ところが水野十郎左衛門。斬る気が無い相手に抜く気はないと言ってやり過ごした誠一郎を一言「気に入った!」と言うが早く、今度はやたらとハイテンションに馴れ馴れしく甲斐甲斐しく世話を焼き始めます……いや、いいなぁ。こういうノリ…

 聞けば、誠一郎。師は宮本武蔵。師の言葉により、吉原へ「庄司甚右衛門」という男を捜しに来たというのですが…どうやら当人の預かり知らぬところで複雑な事情がある様子。
 わけのわからぬまま、誠一郎は吉原に居候することになったようです。
 そんな事情を聞いた吉原のご隠居こと、謎の老人=幻斎氏。何やら思うところがあるらしく、誠一郎に「吉原の表と裏」を見せることにした模様…
 …羨ましいなんて思ってませんよ、ええ。(笑)

 そして始まる吉原巡り。
 吉原を裏から守る男たちに、未来の見える少女・おしゃぶ。(何やら誠一郎と夫婦になるとか言っておりますが…原作では結構キーパーソンだったのに、何だか扱いが薄いような)
 吉原は女の為の砦。女にとっては極楽。けれど男にとっては…
 幻斎のそんな話を聞きつつ、夜の町をあっちこっちへと。
 女を知れと言われて廓通いをするも、廓の作法が鬱陶しかったらしく、一人抜け出して屋根の上で寛いでる誠一郎。太夫すっぽかしてそんなコトをしている所を水野十郎左衛門に見つかって説教(?)をくらったり。
 そうこうしている内に、飴売りに変装した裏柳生の頭・柳生義仙と戦うハメになったり…

 しかし、今回…というか、回を重ねるごとに村木よし子さんの扱いが酷くなっているような…でもそんなところも好きです。ねーさん。

 そして迎える急展開。
 無断で吉原を襲撃したことがバレて、兄である柳生宗冬に裏柳生を束ねる資格を奪われた柳生義仙。ヤツ当た…もとい、敵とばかりに誠一郎を襲う決意を固めます。どうやら原因はそれだけではなく、彼の出生に関わる秘密を握っているようですが…
 誠一郎暗殺の算段に、吉原で密かに忍び逢う柳生義仙と勝山太夫。どうやら勝山…裏柳生のくの一だったようです。
 義仙に抱かれつつ「誠一郎を殺せ…殺して」そう繰り返す勝山。

 「貴様、惚れたな」

 詰る義仙に返す言葉もなく崩れ落ち……うぅん、やっぱり悲劇的な役所な…。

 さて、一方の誠一郎。
 高尾太夫と一時を過ごし、夜の町をふらりと歩いているところを裏柳生の襲撃に遭い…
 裏柳生の暗殺剣・虎乱の陣にて襲われる誠一郎。ピンチ! って、出たぁ、二刀流っ!(嬉々)
 そういやそうですよねぇ、宮本武蔵が二天一刀流。大小抜くのは一生に一度あるか無いからしいですが…

 ところで、二刀流…(私も舞台上でやったことがあるのですが)アレ、抜くのは良いですが、刀納める時が大変なのですよね。
 どうするんだろう…と思っていたら、結局最後まで納刀しませんでした。残念。


 そんなところで、舞台は二幕へ続く……のですが…。

 いや…もう…何というか、いつものことなのですが。
 頭がぼーっとして(要は舞台内容と同化しすぎて)、二幕の詳細まで覚えておりません…

 そんなわけで、二幕はざっと流しでの感想を。




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