劇団新感線 吉原御免状    観劇レポートもどき(後編)

2005.09.20 劇団☆新感線 吉原御免状(青山劇場 18:00〜 公演)
※微妙なネタバレ注意!

●本編(続き)
  一幕でも所々そうだったのですが、この舞台。全体通して非常に…エロい(爆)
 感想として文字では書き表せないような部分も所々に存在しておりますし…良い意味で原作に忠実だと思います。
 変に誤魔化しが無くて。

 ただ…今回原作を重視した結果なのでしょうか。あまり新感線らしいハッチャケぶりがなかったような気がします。
 恐らくそれを入れていたら、三時間の舞台には収まらなかったことと思いますが…
 とはいえ、「あの」橋本じゅんさんが、シャレの一つも言わなかったのですよ!(爆) 古田氏と絡んでいたのに!
 あと、右近氏のオネエ言葉(笑)が控えめだったり……
 一番「らしさ」が残っていたのは、高田聖子さんの八百比丘尼でしょうか。あと、河野まさとさんですね。あの方はいつも通り。

 いやしかし、あのぶ厚い原作を、よくもまぁ新感線が三時間の長さにまとめ上げることが出来たもんだと思います。
 アクションシーンを減らすことなく…キーポイントはしっかり抑えて。
 このシーンは観たかった!というポイントを、一つたりとも外していないのですよ。
 徳川家康の影武者説が無ければこの舞台は成り立たないこともあったのですが、天海僧正の存在まで出してくれるとは思っておりませんでしたし…

 原作の雰囲気、吉原の雰囲気。そして味。キーワードとなる言葉。人の存在。
 そのすべてが凝縮され切った舞台だと思います。

 欲を言うなら、太夫達の着物。
 概ね良かったのですが、ほんの一部。張りの無いような着物を羽織っていたシーンがあったのですよね…
 「吉原」という歴史的な遊廓を舞台としていただけに、この辺は徹底的に拘って欲しかったのですが…それだけがちょっと残念でした。
 あと、小道具片付け……(黙)

 …という事以外は、非常に満足!
 原作あり舞台ということで、新感線の舞台も原作も好きな私としては心配していたのですが…
 そんな心配は開始五分でアッサリ杞憂と消えるくらい、素晴らしい舞台でした。
 可能な方は是非、原作と共に御覧になって下さい。
 舞台の面白さは勿論ですが、非常に奥の深い内容だと思いますので…。


●それぞれの役者さんのこと
・松永誠一郎(堤真一)
 殺陣と怒声の迫力はさすが! 照れたような笑顔も可愛くてヨシ。サービスショットも…うん…(何)
 純朴さがちょっと足りなかったかなぁ…という気が。でもまぁ、その辺は堤さんの味なので良いです(笑)
 個人的に、染五郎氏と同じくらい壊れて欲しい気もしますが…今後に期待、ですかねぇ。

・勝山太夫(松雪泰子)
 この方がまぁ…巧いんだ。この人が居なければ、今回の舞台はなかったんじゃないかと思えるくらい。
 悲劇的な役所なのに、それに溺れることなく。色気も切なさも女らしさも…濡れ場も叫び(ぇ)も完璧!
 『ぬしさんに…惚れんした…』
 …もう最高です…

・柳生義仙(古田新太)
 言わずとしれた最近の悪役…いや、最近じゃないですね。(笑)
 今回は笑いは控えめ。エロと残酷さは四割り増し…な感じでした。
 動きが鈍ってきてしまったのは腹の肉…ケフン、もとい、年のせいということにしておきましょう。
 しかし…悪役ハマってきましたねぇ…

・水野十郎右衛門(梶原善)
 ハイテンションな旗本奴の頭。無駄に馴れ馴れしくて友好的で世話好きで良い感じ。
 こんなオッサンが近くに居たら、鬱陶しくて仕方ないでしょうね…(爆)
 でも憎めないキャラクターなのです。大好き!
 そう言えば、最後の見せ場以降、科白無かったですね…

・高尾太夫(京野ことみ)
 吉原一の太夫なのに、勝山太夫に誠一郎取られたお人。でもこの先一番、支えてあげられる人だとも思います。
 えー…と…役者さんの演技力がちょっと、な感じで、イマイチ印象に薄いのです。
 琴弾けなかったのは多めに見るとして…廓言葉くらい使いこなして欲しかったですが…
 まぁ、全体通して可愛かったのでヨシとします!

・柳生宗冬(橋本じゅん)
 柳生義仙の兄にして、柳生家頭目。(頭目?)人を斬ったことが無い男。
 役のせいでしょうか、今回全然笑いが無かったです…ちょっと期待してたのですけどねぇ。
 あんまり大人しかったもので、始め暫く誰が演ってるのか分かりませんでした。
 それもまた、見事と言えば見事。

・八百比丘尼(高田聖子)
 幻斎殿を「くん」付けで読んだり、登場シーンから錫杖振り回してたり、何というか…
 聖子姐さん、ソレ素ですね?とか言いたくなるくらい、聖子さんでした(笑)
 聖子さんだけど、八百比丘尼。相変わらずキャラクターを完璧に自分のモノにするお方です。
 アレなシーンでは背中の刺青にやられました…格好えぇ…

・狭川新左衛門(粟根まこと)
 参謀…っぽい、けど、ヤラレ役。色々画策するけれど、剣の腕もそれなりに立つけれど、頭も剣技もいつも一歩及ばず。
 腰がひけてる演技、堂に入ってきましたね(涙)
 抜いた刀を背中に隠すようにカチリと回す構え(?)は格好良かったです。動きにキレがあるのですよねぇ…几帳面というか。
 今回、川原さんとよく絡んでいて、お二方共好きな私としては幸せでした…が…
 扱いが川原氏と同レベルになってきたのか、それとも川原氏がのし上がって(笑)きたのか…
 や、どの位置に居ようと好きなのですけどね。人殺しのような目つきと、腕。
 そう言えば今回、眼鏡をしていませんでしたね。

・幻斎(藤村俊二)
 オヒョイさんこと、藤村俊二氏。この方の場合、本人のキャラクター性がそもそも強くていらっしゃるので…
 今回もキャラクターを食ってしまうんではないかと少々心配していたのですが。そんなことは無かったですね。
 色々な人生歩んで、色々な苦労して来たからこそ、幻斎=藤村氏の吐く言葉にも重みが出る。そんな感じです。
 長科白を一度噛んでしまったのが惜しかったです…

・あざみ乃(村木よし子)
 幻斎に「どくだみ」とか呼ばれてたり…
 河野氏に思いっきりどつかれて、床(?)にべちゃっとなってたり…
 扱いがもう、何というか…女に対する扱いじゃない、んですが(汗)
 それを「酷い」とか思わせず、笑い?に変換出来てしまうような、そんな…不思議な魅力?
 うん。疑問符が多いのは何と言えば褒め言葉になるか困っているからです(爆)
 正直に言います。こんな人になりたいです。

・影山三十郎(川原正嗣)
 途中、弓構えて走ってくるシーンがあったので、そのまま射的やってくれるか!?と期待してたのですが…
 さすがに飛び物は危険だったのでしょうね、弓討つシーンはありませんでした。多分。
 最近は役者さんも皆動きのキレが良くなってきたので、たまに人に紛れてしまうことがありましたが…
 肝心な部分での殺陣のキメはさすが。目で追っていてうっとりしてしまいます。
 今回は狭川氏の配下その一、てな役所でした。覆面ばっかりしてたのですが…声で判別。(笑)



 とりあえず、こんなところで。
 他にも色々な方が居られたのですが…(右近氏とか逆木氏とか)
 今回、あまり目立った役所ではなかったのですよ。
 かなり個性を抑えるような立ち方をしてらっしゃいましたが…相変わらずな部分は、皆さん相変わらずでした。




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