2003年7月
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2003.7.1(Tue)

「月ノ想ヒ」


今宵の空白を埋めるは
懐かしい面との語らい
半ばを忘れられては居たが
それも詮無きこと

ならば
今一度の邂逅を慶びとして
気紛れな漆黒に小さく感謝を

どうでも良い、と
貴方は笑うかもしれないが。


夜明けまでの短い時間
思いがけぬ訪れを
酔うままに引き留め
気の赴くままに語り

見えぬ新月を見上げ
吐息一つ

幸せだと。



2003.7.2(Wed)

「飢餓」


様々な事象に
途方もなく 飢えている

例えば夢
例えば熱

最早国の為には動けない此の身と心

ならば俺は何の為に
言霊を幻を紡げば良い?

闇の焔のもたらすは
頽廃的な安らぎだけでは無いと

どうして証を立てれば良い?


人の多さに夢溢れ
受け入れる術もなく扉を閉じた

この国は何処へ行くのだろう…



2003.7.3(Thu)

「酔夢。」


求めるままに
酔うままに

腕延ばし触れて
引き寄せて引き寄せられて

焦がれていたのか
求めていたのか


夜闇に朽ちる迄

甘い夢に沈む夜

三日月が嗤う。



2003.7.4(Fri)

「ことば、ことば」


安らぎを与える事が出来るのなら
救うことが出来るのなら

求められるまま 請われるまま
願う言の葉を
欲しい言の葉を

望まれるままに幾度でも
紡ぎ出し捧げてやろう


だが気付く事莫れ

其処に魂の無いことを


言霊使いの所以
予見を司る者の定め

此の身は余りにも言霊に依り過ぎ
その真偽見抜くがゆえに
甘い嘘にも酔えず
自らを騙すことも出来ず

唯願うのだ


忘却を。



2003.7.5(Sat)

「墨焔」


…忘れて呉れと
…忘れないで呉れと

望むのは何れ?


請われる侭に腕延ばし
欲するままに抱き寄せて


…眠りなさい。


レテの河に。



2003.7.6(Sun)

「」


気紛れに望む忘却は
皮肉なほど与えられる「素顔」

不思議なほどに
俺の望むものと等しく

あまりの甘美さに浸り
 堕ちかける
其の事実に懼れ目を背け

…だが
どうして手放すことが出来よう。

堕ちかけはすれど
堕ちることは無い

後悔せぬと囁き告げて


静寂の夜に臥る。



2003.7.7(Mon)

「終わらせない時はどこまでも永く。」


今更ながら、気付く
この身に『公』の概念を宿せぬことを

永い時を
ゆるやかに生きてきた此の身には
この世界の時はあまりにも性急に過ぎ

うつろいゆく世界に眩暈すら覚えて

…だからこそ。

個で在れる場所を俺は望む

ただ黒き大地を愛しみ
朋と語らい 詩を吟い
楽を奏で風景を愛で

何より

美しいものを美しいと言い
愛おしいものを愛おしいと言う
その穏やかな許容を望む


…俺は嘘を好まないから。



2003.7.8(Tue)

「星海」


気紛れに降る 月明かりに星瞬き
瞬いて混じる 夜闇へ
そして見上げれば 亜空間に漂う
天球儀の色 碧翠に染めて
音無き音 響くよ 琴弦の如く

遠い夜に響く 沈黙の鐘の音
静寂震わせて 天空へ
そして見上げれば 深き藍に彷徨う
天球儀の色 闇色に染めて
影無き影 過ぎるよ 追憶の如く

眠る夢を過ぎて 輝ける光球
まばゆく照らす 宇宙-ソラ-を
そして見上げれば 遙か無限に浮かぶ
天球儀へ幾多 彩り与え
時間無き悠久 刻むよ 生命の如く

深青に漂う 碧星よ
祈り受けて 漂う 永遠の海…



2003.7.9(Wed)

「流。」


時は流れ 人は変わる
変わらぬものは己のみ

否…

少しは変わっただろうか

静かに佇む道標が
少しずつ朽ちるように


…変わるのではなく
元々内にあったもの

思い出しているだけかも知れぬ。


流れに一人佇む。

道標のように。唯。



2003.7.10(Thu)

「関わらざるもの」


関わるもの
関わらぬもの

幾度と無く
俺は国には関われぬと痛感する

政務の話
軍の話
聞くだに拒絶感が溢れ零れる

それほどまでに…
何故。


其れは恐らく
夢を語れぬ国だから。

まほろば無き国に
影炎−かげろう−は生きられない。



2003.7.11(Fri)

「虚鐘響」


疲れているのだと思う

高官や上層陣は遙かに、と思うゆえ
表には出すまい、とも 思うが

少しの事が心に堪える

喜びも悲しみも
不快感も安らぎも
何もかも


…いっそ

このまま尽きてしまおうか。



2003.7.12(Sat)

「」


色彩豊かな言の葉が
楽を奏でる世界が

漆黒に目の眩み沈黙へ沈む俺を
気紛れに現へ引き戻す

まほろばを詠えと
夢を抱けと

高らかに。

求めるでもなく
拒絶するでもなく。


ならば俺も
あの満ちかけた月へ高く手差し伸ばし
誓おう


幾たび満ち 幾たび欠ける月のごと
我が身もまた 朧気なる焔

譬え月欠けようと
炎尽きかけようと

決して朽ちることは無いと

其は、世界の選択なのだ。



2003.7.13(Sun)

「詩。」


眠れ得ぬ夜の果て
暗闇に点す灯り
紙とペンを傍らに
一人思いに耽る

眠れ得ぬ夜の果て
閉じた瞳の裏側
紡いだ夢と言の葉に
唇寄せて囁く

眠れ得ぬ夜の果て
風そよぐ窓の畔
走り書きの記憶を留めた
幾つかの文字抱く



2003.7.14(Mon)

「或る問答。」


『生きて居るか』

『なんとかね』

『元気か』

『それなりに』

『そうか』

『うん』

『死ななければ、それで良い』


そんな会話が心地良い
不思議な 夜。



2003.7.15(Tue)

「静闇 〜 試作〜」


限りある世界に在る歌へ
果てぬ夢叶えと 詠われる詩へ
永遠を迎えぬまま 記憶の壁へ刻む
こは君への讃辞…静かに讃えるための

生まれ行く言の葉よ 生命を為せ
奏でよ 麗しき幻想の囁きを
そして――静闇〜SilentDark
安らかに君よ眠れ


終わり無き世界に在る歌へ
霞んだ夢届けと 詠われる詩へ
掠れた言葉にて 色褪せた手帳に描く
こは君への讃辞…沈黙に封じるための

紡がれる旋律よ 天上の楽となれ
彩るは 涸れかけた脳裏の記憶
だから――静闇〜SilentDark
静寂に君よ眠れ

沈黙の静闇〜SilentDark
我が内に 永遠と眠れ…



2003.7.16(Wed)

「十六夜月を誘酔月と詠み。」


酔うように惑うように
足りぬ熱を求め
彷徨い
黒の夢に沈む。

伸ばした指先に触れる細糸

閉じた瞳の奥の漆黒

焔煽り吹き抜ける風

誘酔月の夢。


言霊は 魂
総てに与える 魂

願わくば
月の夢にも生命宿し給え。



2003.7.17(Thu)

「銀風。」


静寂の木々揺らせて 遠く銀月に至る
透き通る滑らかな涼 紺碧の空に望む

流れゆく風に想うは 昔日の懐
一人天儀球見上げ…
   …白銀の吐息洩らす

指伸ばし触れれば 水晶の息吹
胸に包みて瞳閉じ 沈黙に身体浸す

眠る大地に願うは 過日の祈り
深く息を吸い込み…
   …届かぬ詩 唇に乗せ

蒼穹に架かる十六夜月の馨
静かに抱き風の降る 碧星の夜…



2003.7.18(Fri)

「無題歌」


黒き大地に佇みて
鋭き刃影眺めやる
その武を譽と見守りつ
智の絶え無きを唯願う

我が身は無限
悠久の果て
墨色焔を宿しつつ
黒き憧憬 沈む場所


青無き空を見上げては
緋色の瞳で嘆息す
この身を現と嘆きつつ
幻臥らせ夢詠う

我が身は夢現
時より遥か
触れ得るまほろば唯為して
影の軌跡を描くもの



2003.7.19(Sat)

「抱月」


己が身を標と為したのは
何時の日だったか…

気付けば そう

金色の夢を抱き
望まれるままに 此の身は在ると

請われるままに形為し
願われるまま与え
それを此の身の型として

…嗚呼。

欠け行く月を抱く。
再び満ちるまで この腕で眠れと。



2003.7.20(Sun)

「世界が終わるその日迄。」


何度も何度も
繰り返し求め続ける
繰り返し与え続ける

…そして気付くのだ

擦れ違う事で互いを識る
決して交わらぬ二重螺旋であると


Diana=Dia=Dias.
The pair will be a circle
on a night of the end.

此の世界が終わる迄。



2003.7.21(Mon)

「」


停滞の時に流される
蠱惑たる安寧に飲まれる

其れは望むところでは無いけれど。

無窮なる空白
混迷なままの刻止
乱世の夢想

…さて。

真より望むものは、如何。

望む場に無ければ
望む動きが出来ぬのは

真理か、否か?



2003.7.22(Tue)

「刃を翻す」


愛おしき者の頸に
剣突き立てる覚悟の
有無を問う。

進むべき道を過ちて
引き返す事の出来ぬ
その終焉を結ぶ覚悟の
有無を問う。

愛おしき黒き大地
その為にならば 俺は

いつにても此の身を翻し
国に剣突き付ける覚悟有りと


…覚え置け。



2003.7.23(Wed)

「善意なんかじゃない。」


独り善がりの駆引き。

己が嫌うものに身を投じる
皮肉なほど冷静に。
己が直感力を策略に投じる
冷酷なほど計算高く。

欺瞞と皮肉。偽善と自己満足。
善意なんて存在しない。

…大嫌いだ。



2003.7.24(Thu)

「言葉を捜し。」


誰よりも近く
誰よりも遠い
背合わせのまま佇む半身

熱を存在を感じつつ
手に入れることの叶わない
その事実が甘く
時折、残酷で。

浅ましいほど求める

忘れさせてくれと

言葉無き行為を、唯。


誰でもない誰かに捧げる。
行き場のない、想い。



2003.7.25(Fri)

「drei」


現の見る夢
其をまほろばと云う。

まほろばの語る現
其を夢と云う。

夢とまほろば
二つが為すを現と呼ぶ。


すべては、うたかた。



2003.7.26(Sat)

「幻儚」


溶けた鏡の奥底に 動かぬ景色を映し出す
眠れぬ季節の溜息で 移れる姿を歪めつつ。
ゆらり ゆらめく 幻視のように
見えない情景 意のままに…

砕けた硝子の鏡の中で 景色は色へと昇華する
惚けた日差しの溜息で 新たな風景描きつつ。
ふわり 漂う 淡雪のよう
思うがままに 姿流れて…

水が織りなす真澄鏡 ありえぬ情景映し出し
それはmirage 溜息で
その身を揺らす 一刹那…



2003.7.27(Sun)

「傍観者ゆえの。」


さてさて。

公とは権威の象徴であるか。
況や国家をや。
答えは否。
責任と重圧の代受人であると。

どのような形であれ
一つとして纏まるには
何処かしらで総意を纏め
判断し、事を為し。
その結果為された事象を受け留め
許容し、決断せねばならぬ。

元来ならば責は
国に属する者が総じて背負わねばならぬもの。

押し付ける場所があるだけ有り難いと思え。


嗚呼。
焔は未だ国を捨て切れぬのか。

愛するは大地のみであると云うのに。



2003.7.28(Mon)

「ゆるやかに。」


涼やかなる魔島の風に吹かれ。
瞬く星辰を遠く望み。
龍啼の音 途切れ 途切れて。

吐息と混ぜて詩を吟じ
閉じた瞳の奥で彩りを

忙しなき現の夜に疲れたら
此処へおいで。と。

休むだけ、休んだら。


行くが良い。

そして己の為すべき事を為せ。



2003.7.29(Tue)

名も無く生命も無く
熱も無い 屍
暗き冥府の淵より喚ばれ
使役された果て二度目の死を

嘗ては虹色の翼得た王であったろう

その咆哮は大気を震わせ
幾度か人を戦慄せしめたやも知れぬ

青白き魂
崩れ落ちた誇り


奴らは其処に在る。



2003.7.30(Wed)

「TeiferWald」


青見えぬ大空の下
風吹きて雫 落とし

残陽と交わり光彩を為す


雲分けて降れるは
黄昏誘い 夜導く闇

黒き雨に打たれ

翡翠は虹の影を得ん



2003.7.31(Thu)

「ヨノハテ。」


夜の果て。
世の果て。

一人行き着く先は。
一人息吐く場所は。

ヨノハテ。


言霊使いの、戯れ言。



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