2003年8月
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2003.8.1(Fri)

「夏祭。」


闇夜に上がる彩華
弾けて星と輝き
地上の喧噪 照らす

混沌としたこの地
人は舞い集う
騒々しく 華やかに

禍も幸いも

黒き大地にて
宴を為す 音と為れ。



2003.8.2(Sat)

「宿した熱と、預かり物。」


始まりは、一つの約束。

今宵、一つの欠片を預け
また、一つの欠片を預かり。

手の中の形 握りしめて
時折開いては 眺め
そしてまた 形を確かめ。


背には虹霓 手に蒼華
腕に風龍 胸に黒

念いて眠る 夏の夢。



2003.8.3(Sun)

「曇りのち時々流星。」


昏き魔島の空。
流れ星 ひとつ。

地下深くより眺め
小さく吐息 ひとつ。

ただ光条の消えるを
惜しく思い手を伸ばすも
届くはずもなく。

嗚呼この指に留めて抱ければと思うは
遠き時の彼方へ位置する俺の傲慢か。

星の命一つ

俺の命一つ

同じ秤にかけるは、傲慢か、否か。


魔島の空に 星流れる。



2003.8.4(Mon)

「目覚めぬ青 〜T」


 沈黙満ちる泉の底に
 遥か夜空の月を映して
 水無き水面に一滴
 吐息を零せば砂はさざめく

 草原駆ける風吹かれ
 声にならない呟き漏らす
 別れを惜しみつ消えゆくは
 地上を去った青い面影


月の降るあの場所で
一人詠う、泉への詩。
持たぬものだからこそ
俺は水面を怖れ、惹かれる。



2003.8.5(Tue)

「目覚めぬ青 〜U」

 水の代わりに薄い硝子を
 掌さらせば鮮血溢れて
 真紅の色に見とれては
 流れる生命をせせらぎと聞く

 翡翠が並ぶ冷たい草原
 身体横たえ瞳閉じれば
 溢れて流れる涙一筋
 乾いた大地を刹那潤す…


沈黙が耐えることが
ヒトを壊すこともある。

受け止めてやる。
この焔は
墨焔はその為に。



2003.8.6(Wed)

「目覚めぬ青 〜V」


 水無き大地の願いはあれど
 空へと届く祈りは皆無
 雲さえ流れることの無い空
 一夜ごとに灰のみ積もる


受け止めようと伸ばした腕を
貴方は拒絶するかも知れぬ。
それでも
閉ざした瞳を抉じ開けて
その眼に世界を映したい。

ルナティック・ハイ─

月に狂うと言うのなら
貴公に出会う前から俺は。

失墜する月よ
俺を映さなくとも良い。
せめて世界を映し 高きへ在れ。

自らの選んだ道ならば
胸を張って進めば良い。
信じる道を。
どこまでも真っ直ぐに。



2003.8.7(Thu)

「星墜つる」


剣戟の響 戦時の喧騒
刃の煌き 尽きせぬ炎

黒が光を食らう。
貪欲に愚かに。


光の朽ちるまで

静寂のまま

沈黙のまま

眠りを

唯 眠りを。

それが叶うなら、どんなにか。



2003.8.8(Fri)

「葬歌」


『誰か此の眼を潰して下さい
 誰か此の耳 殺いで下さい
 黒しか見えなくなるように
 音無き夜に沈めるように

 誰か此の手を縛して下さい
 誰か此の脚 戒めて下さい
 抗うことを 赦さぬように
 逃れることを赦さぬように』


…心配されるには及ばないんだが。

たまには、な。



2003.8.9(Sat)

「懐古」


朧月に遠雷。
戦乱の音を、一人遙かに聞く。

求めるものは既に無い。

夢受け入れる術もなく
ただ肥大しすぎた国

国の意志さえ隠蔽とされ
確固たる自我も与えられず
ただ持て余され弄ばれ

理想をかけるにも値せぬ。

それでも

俺の行く場所は、他に無いのだ。

例え
顔の無い兵士が闊歩する国であっても。
歌響かぬほど張りつめた場所であっても。

この国以外に、
行く場所は無いのだ。



2003.8.10(Sun)

「覚書。」


敢えて何も語らず。
敢えて何も報せず。

ただ、記憶に留める。

「RavenShadow」

翼広げたは、この日。



2003.8.11(Mon)

「」


The scarlet of dawn dyes all the grounds.
The fierce black sun soars to the sky.

Awakening is just now invited at the time.
The one lurks in darkness
Opens eyes and extend wings.

(Place where the evil spirit wakes up just here...)


The dusk when a shadow spreads is filled and it is ground coloring.
The star traveled to the sky sings darkness.

All things are led to The CLOG
It is held in the arm it falls and sinks into darkness.

(Place where the evil spirit sleeps here...)


Pride The darkness high and gathers to The CLOG.
The pure white which shines decays in CLOG.

(This ground is a dangerous island...
It is the land to which self should return...)



2003.8.12(Tue)

「色彩。」


目覚めた先に
あの目の醒めるような色彩が無かった。

薄ぼんやりと見上げた先の闇
…ああ。
こうしてヒトは変わるのだと。

不思議と穏やかで
少し 息苦しかった。


俺が求めるは「変化」ではない。
俺が望むのは「変革」ではない。

ワタリガラスの背から眺める
愛おしき大地の影。

何が出来るだろう。
何がしたいのだろう。

自問しつつ。

…今宵は、臥る。



2003.8.13(Wed)

「」


憎悪とも思える程の怜悧な感情を
久しく感じていなかった感情を

ほんの一刹那、思い出した。

吐息一つ。
黒き翼を抱き締める。

後悔はすまいと、思う。

変化を望まない俺が選んだ
この翼が。

愛おしき大地を包み込むことを、信じて。



2003.8.14(Thu)

「心のまま。」


心のまま振る舞い
時には相手を傷付け
自らも傷付き

それは決して悪では無いと

偽ることもなく
騙ることもなく
傷付け合えるその距離に感謝して。


泉の奥底、一人沈む華よ。

信念無き姿は
心無き姿は

俺が嫌う情無き機械
そのもののようだ。

自らの信じた道があるのならば
誇り高く生きよ。

誰よりも。
何よりも。

それゆえに人は美しい。
輝きを忘れるな。



2003.8.15(Fri)

「唄。」


あるひ、どこかで。
ちいさな小鳥が唄っていた。

『やりたいことがあるのでしょう。
 目指す姿があるのでしょう。
 どうして貴方は戸惑うの
 どうして貴方は悩むのですか
 目指す場所が解っていながら
 為すべき事を解っていながら
 どうして貴方は躊躇うの
 どうして貴方は後悔するのですか。

 道を選ぶのも進むのも
 すべては貴方が決めたこと。
 振り返る事無くお行きなさい
 遥か高みへ瞳を向けて

 お行きなさい。
 そして為すべきことをなさい。

 たった一つの事でも良いから
 誇りの持てる生き方をなさい。』

高らかに高らかに。
その喉震わせて。



2003.8.16(Sat)

「目覚めぬ青 〜W」


世界を造る硝子の内に
夜と来たりて月は降る
音の記憶と封じられた歌
目覚めを知らず生命は果てて


いつか

…いつかは。



2003.8.17(Sun)

「目覚めぬ青 〜X」


過去の水泡空の向こうへ
氷と散った涙も想いも
二度と目覚めぬ眠りの中で
溢れて消える一刹那


魂の休息。



2003.8.18(Mon)

「目覚めぬ青 〜Y」


白砂の大地に死を宿すまま
祈りを捧げる水晶像
転がる身体に星を映すも
黒のみ知りて世界と墜ちる



2003.8.19(Tue)

「目覚めぬ青 〜Z」


気付かぬ罪も消えゆくままに。


 嘔吐感に苛まれるほど
 拒絶感に襲われるほど
 嫌悪し 憎悪する

 知らぬうちに。
 これほど拒んでいたのだろうか。
 現を。夢無き世界を?

 胸の奥が焼ける。
 今はこの隻眼に映すも痛い。


 暗闇に一人
 涙無く嗚咽する。

 唯 衝動の収まるを待ちて。



2003.8.21(Thu)

「幻」


夢を視る。

未来のことか過去のことか
そのどちらでもないのか
今は未だ解らないが。

夢を視る。


無意識に伸ばした指
触れた絵札の束

焔の揺らめきに答えを見出せと?

世界が告げる。
ならば躊躇うことはない。

黒き焔よ
まほろばを映し出せ。



2003.8.22(Fri)

「-ONE-」


耳にしたあの日から
こびり付いて離れない

嫌悪を生み憎悪を育て
悲痛な叫びを押し留め

ただ耐える
無意味に

情無き相手に情を語っても説得は難く
ならばその視線同じくし…

その行為が
愚かなるその行為が胸を苛む

どこまでも。


たった一言のその為に。



2003.8.23(Sat)

「彩画−黒ノ月」


闇深き大地に臥る
砕けた彩画の欠片

沈黙のまま舞い上がり
新たなる月の形為して

黒耀の宮織り為す



静寂の内に。



2003.8.24(Sun)

「〜美季礼賛〜秋〜」


深紅に染まる落葉の
大地染めたる儚さも

夜闇彩る満つ月の
刹那と見ゆる輝きも

移ろう月日に巡り来る
惜別と似たこの季節

白きに渡る架け橋を
招く翡翠の空間か…


 …ちょっと早いがな。



2003.8.25(Mon)

「Vergilius」


古き詩人の名を冠した
そは音紡ぐ竪琴
或いは彩画描く筆
手記にして我が腕

その構成要素
一端が欠けても
その存在は成り立たぬ
なれど

明滅する光沈黙し
吐息途切らせ眠る
その姿 如何

幻影を投射する力無くば
存在できぬというのに。



2003.8.26(Tue)

「破鏡近し。」


破鏡の闇に、思い出す。

初めて視た空は、どこまでも暗く。
ちりばめられた星々に彩られ
紅蓮渦巻く場所に一人

星夜近くなるたび、思い出す。

闇の安息を
邪炎纏う自らの衝動を

思い出す

思い出す

思い出す。



2003.8.27(Wed)

「風景」


欠け行く月を見上げ
月が見たい、と ぽつり

呟いた言葉は攫われ
弄うように風 ふわり

『幾重にも蒼穹を越えた彼方でさえ
 貴方の望むものは無いのです
 満たされる事を知りなさい
 それゆえに満ちる喜びを知りなさい』

流れ群れる雲が嗤う
見上げた肌へ ぽつり

この身を焦がして消ゆる
残酷なる雨雫 きらり



2003.8.28(Thu)

「」


刻み込まれるは 音
秒針に乗り 怠慢なほど
かちり…かちり…
見守るほどに…狂気

刻まれるは 思い
一瞬 一刹那 それでも久遠
そっと… そっと…
積み重ね続け…堕ちる

一秒ごとに 狂えと
刹那の時を 狂えと

狂って… 狂って…

…そして――



2003.8.29(Fri)

「無題歌」


 振り払った
 切り捨てた
  自ら選んだその先で
 知らず気付く 孤独

 これほどまでに冷たく
  これほどまでに寂しく
 己が身の矮小さを知り
  そうただ 愚かな事と

 孤独な憂い
 孤独な哀しみ
  小さきものよ目を開けて
 知るが良い 世界を

 あれほどまでに広く
  あれほどまでに温かく
 己が身の存在を識り
  愚かなる 想いは消え

 振り払い
 切り捨てる
  自ら選ぶ道も良い
 けれど一人 寂しさに泣く

 けれど一人 戻る道も無い


誰でもない「誰か」へ。



2003.8.30(Sat)

「音 -on-」


紙面に落とした筆の先
無機質に続く線 なぞる
流れを詠った音だけのよう
ただひたすらに細い線
どこまでも どこまでも…

白を二つに分かつがごとく
終わりの無い線 描く
限りない絶望と願い込め
線のまま変わらぬ 黒く永く
はてしなく はてしなく…

この想いを何に託せば?
この永劫はいつの日果つる?
紡ぎ出せぬはorigin〜源〜 想像の集合体
物言わぬ黒よ いつか詩となれ!



2003.8.31(Sun)

「空まで至る。」


 時流れる空 夢終わり無く
 冷たい腕 天にかざし 願う
 風に雲乗せて 祈り果てしなく
 暖かき陽の恵み その身に受けつ
 夢叶うは至福 願い巡れよ
 いずれ辿る まばゆきは約束の地…
 いざ歩み行く道 空に繋げん


数度の邂逅のみにて心得し…
今日を去る粋人へ。



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