2003年10月
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2003.10.5(Sun)

「呼応」


ふと、気が付く

弱って 飢えて

目も見えず彷徨う獣のように

望んだ刹那さに寂しさに

ただ、弄ばれ

手を延ばすこともせずに

ただ、悲しみ


動かなければ、置いて行かれる

解っていたことだろうに。



2003.10.6(Mon)

「心象風景」


黒き大地 その片隅
断崖に腰降ろし 空を視る

―何も 見えない

その漆黒は心地良いものではない

―思い出す

この片眼に宿った
空虚な黒を

いっそ両の目を捨てて仕舞おうか
見えて視れぬものに焦がれるくらいなら。



2003.10.7(Tue)

「」


珍しく
焔の色した酒に酔う。

満つ月近い空へ掲げて、ゆらり。

玻璃杯掲げて、干して。

振り返れば。

空が其処に在る。



2003.10.8(Wed)

「もしも」


世界が二つの言葉で構成されていたら。

陰陽

善悪

正邪

光闇

そのどれでもなく

ただ二つの言葉で構成されていたとしたら。

貴公は何を挙げるだろう。

己が身を構成する言霊を。



2003.10.12(Sun)

「rest」


眠りたい。

唯闇の腕に抱かれ

遠き友が見えなくなる迄。

響も聞こえず
姿も見えず

違えた道が潰える迄

いつまでも。



2003.10.13(Mon)

「零」


…なんて無粋な。


彼の国は故郷に等しく。
憧憬に近しく。

この身に纏う焔の生琉里は、魔島。
然れど今は。

其の地をこの心の生琉里と思おう。

…間に合ってくれ。



2003.10.14(Tue)

「焔漂い」


惑いて廻り 漂って
迷い 焦がれて 仄かに揺れて。


―『別れではない』

ならば何故躊躇う。

―『其の行為は逃れる為か』

否定は出来ぬ。


己が身の朧を想い
不鮮明に不安定に。

往く道は心に。
半身を傍らに。

両の眼に焔宿し 見据える。



2003.10.15(Wed)

「幻月」


儚き幻光の
煌々と照らし潰えるを 見る

遠く聞いた歌も
今は封じて

一人

彼の国へ至る道を翔る


間に合わぬやもしれぬ

それでも良い
ただ共に在りたいと。



2003.10.16(Thu)

「虹」


刹那煌めいて
刹那轟いて

一刹那こそ永遠なれ

其の名その彩背に負うて
立つ人々の誇らしき

羨望し
憧れて

己が身を思う
闇に潰え
黒に惑わされしこの身を


なんと浅ましい。



2003.10.17(Fri)

「時の輪の接する場所で」


思いがけず再会した輩と
旅路を共にする

腐竜の穢に影薄れ
人の血が紅に道を彩めても

それでも進む

何か。

何か。

…己が故郷よりも今は
彼の國に在る人を想い。


赦せとは言わぬ。

それでも俺は此処に在る。



2003.10.18(Sat)

「遠く」


聞こえない筈の音を
見えない筈の景色を

この耳にこの瞳に
与えないでくれ

手の届かぬ口惜しさに
声の届かぬ悔しさに

気が狂ってしまうから



2003.10.19(Sun)

「儚」


世界が回る終わりなき世界絶望と歓喜見えない始まり夢が狂い出す過去の幻想宿命られた言葉変わらない未来時が止まる無限の時刻追憶は封じ込まれ砕けた記憶が迸り出す選択されない事象は満ちて


己が身で出来ることなど
限られていると
とうに理解してはいるけれど

届かない叶わない願いを嘆く

長らくヒトと共に居て
少し影響を受けすぎたかもしれない

だが

それも心地好く。


かつての俺が云う
「愉しめぬ世界は捨てよ」
今し俺が応える
「まだ捨てられぬ」

何故此処に在る。



2003.10.20(Mon)

「狂い咲き」


何処も彼処も
色褪せるほど
与えられて
溢れて

言葉が 声が
音にならねば
一体何が詩を為す

心が 想いが
震えぬのなら
一体何が楽を奏でる

色褪せるほど狂い咲く
紅蓮の花に目を伏せて

迷わぬように灯を燈し
暗きへ向けて沈思する

己が道は何処へ往く。



2003.10.21(Tue)

「魂」


たまみがく為 生まれし事を思え
つらく悲しき淵に立つ時
いやいやのことでも勇み喜べ
我 たまみがく為 生まれかわりし事思い
うらみつらむことなかれ
我 生まれし事は
全てたまみがく為と思え



2003.10.22(Wed)

「うつろわざるもの」


愉快だね。

時を止めようと立ち止まっても
世界がそれを赦さない。

うつろわざるもの。
其の背を圧すのは誰が腕か。

この胸にこの心に
世界を宿そうとするのは誰。

届きそうで届かぬ場所へ
この身を導こうとするのは誰。


これが世界の選択なのか。



2003.10.23(Thu)

「かつて」


ふと思い出した。

彼の人が魔の地を去るに、
その先を示したカードは
皇帝であったと。



2003.10.24(Fri)

「縁」


罪悪は業因深く
悔悛の情は我らに弛緩せり

心行くまで涙を流し
数々の告白懺悔を為す済ませては

また浮き浮きと泥濘の道へ
我らは舞い戻る



2003.10.25(Sat)

「響」


音が彩が 心揺らす

詩人 其が従うは
己が心震わせるもの

ならば何故動けない
何故動かない

解って居るのだ

故郷恋しと…否。

恋然るべきは 一人。


傍に立てぬ この心の弱きをこそ恨め

今は唯 遠く臨む。



2003.10.26(Sun)

「臥龍覚醒」


その日を待ちて。
唯。

何が出来るのか
何がしたいのか
何を求めるのか
何を拒むのか

ひとり もう逢えぬ

…貴方に逢いたい。


俺に言葉を。



2003.10.27(Mon)

「無題詩」


死したる黒の大地に在りて
祈りを捧げる腕は冷たい
見つめる星の色は暗くて
色無き天使墜ちゆく世界



2003.10.28(Tue)

「流動」


愉快なほどに解らぬ世界だ。

振り仰いで空見やる
月見えぬ空に浮かぶもの

最早相手にするも莫迦らしい
それでも時は動く

…皮肉なほどに。



2003.10.29(Wed)

「今一度」


その背に焔の熱あるを。


今の俺にはそれしか云えぬ。

唯 貴公の傍らにあるだけが。
せめてもの…



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