2004年1月
<<Back | Next>>

2004.1.6(Tue)

「黒と緋」


闇色の鴉
緋色の鳥

炎より生まれるその翼
影と燃え尽きまほろばへ

緋色の鴉
闇色の鳥

どちらもこの手に宿るもの
抱いて眠って 何処かへ

抱く嫌悪は仮初めに
抱く憎悪も仮初めに

弾けて消えてしまえれば
心穏やかに還れるだろうか

故郷と呼ばれるあの島へ

今は忌まわしきあの島へ。



2004.1.7(Wed)

「」


見ているか。

魂を磨り減らし
幾つかの輪廻転生を越えて

三度この地に立てる者よ


今宵願う

貴公の選んだ道に幸いあれと。



2004.1.8(Thu)

「手紙」


目の前に紙広げ
片手に筆持ちて

思案する

望まれるまま求められるまま
甘言を紡ぎ安らげる場であるのかと

答えは否。

最早戻る義もなく

道を違えた友に背を向け歩む
この身は何処へ往くのだろう


さらば魔島よ 其処に棲む者よ
二度目の別れを 今。



2004.1.9(Fri)

「背」


行き場のない夢
空へ融ける詩
届かない言葉
分かたれた大地

求められることは
もう二度とないだろう

ただ一人
この言霊を請うた
罪に愛されし子を想うと
心は揺れる
戻るべきかと


行き場をなくしたまほろば
空へ融けゆく言霊
届くことのない願い
分かたれたままの道

ふわりと漂い

少し。
まだ、迷っている。



2004.1.10(Sat)

「月鏡」


光しか映さぬ鏡
白しか映さぬ鏡

此の身は 破鏡
黒のみを宿す鏡

その光に耐えきれず
その純白に耐えきれず

砕け 散じて。

絶望 希望 願い 祈り
嫉妬 嫌悪 憎悪 献身
逃避 羨望 夢想 現実
憧憬 懐郷 悲壮 憂鬱
享楽 信頼 信用 謝罪
苦痛 後悔 苛立 焦燥
哀愁 静寂 そして

崩れ落ちて 墜ちて 堕ちて

拾い上げる指先に紅満ち
零れて 忘れていた傷みを思う


皮肉なる月女神
残酷なる太陽神

逃れるのか 抗うのか
闇色に炎灯し 思いに耽る

2004.1.11(Sun)

「責」


すべてに一つ 問う


『楽しませようと思って居るか』



2004.1.12(Mon)

「自戒」


荷物を纏める

いつでも去れるように

引き留める言葉を待つためでなく
己への戒めとして

終わらせるのはいつでも出来る
だからもう少し 堪えて忘れて

懈怠を生ずる光の朽ちるまで
世界を腐らす闇の尽きるまで

誰からも求められなくなるその時が
黒き炎の消える時。



2004.1.13(Tue)

「拒」


光を宿した右目をまた 閉じる

噎せ返るほどの嫌悪
炎尽きるほどの憎悪

触れる事も 聞く事も
見る事さえも 忌まわしく

捨て切れぬ己の心を何よりも憎む


云いたくはない言葉が
口をついて出そうになる

…何も見えぬ世界へ
一人 還りたい。



2004.1.13(Tue)

「ずっと昔」


思われているほど
知られているほど
俺は硬派ではないのだよ

熱があれば手を伸ばし
届く刹那に指握り締め
軽く笑って心に封じる
ただその術に長けるだけ

想いの熱醒め恋しき人の
影が一つと重なるを
遠く微かに眺めて一人
安堵の吐息を漏らしては

重い記憶をそっと呟く
「俺は貴方が好きでした。」
届かぬように 聞こえぬように

手に残るのは贈り物
忘れた頃に知らぬ顔して
そっと戸口に置き土産

こんな男を笑うが良いさ



2004.1.14(Wed)

「紫微」


この心の剣を向け
この心の楯を翳す

すべてが終わり
始まったあの日
かつて決意したこと

その道が違うことがあれば
俺は容赦なく剣を向けると

その願いは 密かな誓いは
守れなかったけれど。

この掌より生ずる炎
この心より生ずる黒

己が信じるまほろばに
己が心は忠実であれと

ゆえに訣別する。
紫微の姫と
かつての友たちと。



2004.1.15(Thu)

「Vergesslichkeit」


蔵の戸を開ける

暗き光と漆黒の闇
輝く月の恵みを受けて
育ち 実を生し

瓶に詰められた葡萄酒
その意は忘却

流れて消えてしまえと
振り上げて壊せなかった
それは黒き大地の思い

黙って踵を返し
蔵の戸を閉じる

一つだけ
そう たった一つ

繋がりを残しても良いだろうか。



2004.1.20(Tue)

「道」


鏡を通して過去を観るようだ
国を憂い 想い
けれど叶わず 夢破れて

佇み続け 戻る場もなく
希望は諦めに
愛おしさが憎悪に変わる前に
決別を


俺が名を与えたものは
そうして皆 消え往くのだろうか

うつろわざる身は
言霊を世に刻むことも赦されないのか

けれど それよりも尚




彩放つ虹

貴方の痛みが俺には辛い

熱を伸べる腕が他にあらば
背を守る君が他にあらば

往く先には 紅の導きを
眠るならば 焔の安らぎを

せめて。



2004.1.24(Sat)

「至天」


変われぬことは
うつろわぬことは
それのみで罪に為り得るのか

世界は変わる
人も 想いも
流れるように
過ぎ行くように

けれど変わらぬものもある

うつろう季節のように
空を往く雲のように
沈みまた昇る日月のように
瞬く星の煌きのように

不変ではない
流動ではない
其は輪廻
うつろい うつろわざるもの

願いを込めて
祈りを込めて

夢幻に生くる君へ
至天の言霊を贈る



2004.1.25(Sun)

「世界へ」


望むことは

夢を 理想を
幻を 祈りを

否定するな、と。

それさえ叶うのならば
他には何も要らない。


それが 俺の世界のすべて

うつろわざる焔の世界


そうでなければ…



2004.1.26(Mon)

「歪焔」


逃げて居るのだと解っている

目を逸らし 背を向け
耳を塞いで 心を閉ざし

失望し 絶望し 諦めたと
そう 言い訳して。

共に歩めぬ寂しさは
共に語れぬ口惜しさは
いつしか
己と周囲への苛立ちになり
憎悪と嫌悪に転じ
やがて拒絶へと

醜く浅ましい

これが夢を追った末路なのか

これが…俺の姿なのか。



2004.1.27(Tue)

「仮初」


政務に夢は必要ない
けれど
人には夢が必要だ

狡猾な執政者を望むのなら
人心の夢を利用せよ
夢を抱くものを盾に
民に幻を見せて現への道を示せ

この身はまほろば
ゆめうつつ

俺が身を隠れ蓑とし
己が鋭き牙を磨け、と。


だが云わぬ言葉だ
決して告げぬ言葉だ

俺が望む世界かもしれぬ

然し
その事が嘆きを生むのなら
道は一つではない。

我が心に天下の二文字無し。



2004.1.29(Thu)

「欠けた刃」


昨夜の月は欠けたる刃
涙の雨に打たれてか
赤く燻んで零れる刃

今宵の月は紅色刃(べにいろはがね)
戦の血の雨打たれては
緋色に閃き弧を描く

明晩月は何色抱く
紅 蒼刃 尽きせぬ嘆き
紫刃 凛烈 融けない想い

欠けて満ちれる まほろばの石



2004.1.30(Fri)

「願」


一人の為に生きろとも
世界の為に生きろとも
己が為に生きろとも
総ての為に生きろとも

貴方には何も望まない

ただひとつだけ願うなら
苦しむな、と


逃れる道が総て消えたのなら
俺の元に来るが良い
すべてを赦し 受け入れ
終わらせて楽にしてやるから

けれど

一つでも希望が残っているのなら
為すべき事を心残りとするのなら
決して俺に触れてはいけない

忘れることなかれ
この身は邪炎

今は亡き 魔の国の炎



2004.1.31(Sat)

「望」


出来る事なら

そう 己が身を省みず
惚れ込む相手の傍に居て
その背を守り 行く末を照らし
支えて共に歩む者で在りたい

友の苦痛を 悩みを 傷みを
和らげ癒す者で在りたい

諫言を呈し 苦言を受けても
己が信じる者が望めば
死地に赴く命であろうと
喜んで受けるつもりだった


いつから
俺は変わったのだろう

…否

もとより 此の身に力は無かったのだ

守るための力も
休息の為の寄木も


俺には
言霊しかない。



<<Back | Next>>