2004年2月
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2004.2.1(Sun)

「一言」


出会った人の真似をして
言葉穏やかに語りかけたくなる

俺の言葉は鋭くて
荒しき炎の言霊だから

出来ないわけではない
何度も見てきた
何人も通り過ぎてきた

けれど
形のみ真似たところで本質は同じ

ならば俺らしく


出会った人々へ

元気で居るか。


小さなことで迷う
そんな冬の夜。



2004.2.2(Mon)

「不眠」


一人眠れず
明け方の空を見る

白む光が眼を貫き
その刹那に傷みを思い出し

高く
手を伸ばす

思い出して


――助けてください



2004.2.3(Tue)

「過」


目が醒めて自嘲する
過去を振り切れぬ己が弱さに
振り切るべきではないと思う
己が甘さに

眠れぬ夜に何度も思い出す
薄れ得ぬ記憶を幾度も

そろそろ 筆を執ろうか。
只 一つの物語として。



2004.2.4(Wed)

「」


広げた本の中
紡がれる物語

読み終えて余韻に浸り
ふと気付く

よく、似ていると

当て嵌めて考えながら

少しは、甘やかしてやろうと
思った。



2004.2.6(Fri)

「倭に酔う」


昨夜
棚の奥に並べた酒を
一人取り出して月盃

満つる月が近いから
窓開き白光を採入れ
酒満たして盃を置く

冷たい風に一息

今宵は誘酔(いざよい)

月よ
お前は何に酔う

2004.2.7(Sat)

「Silhouette Crimson」


夜 居待月を見上げ
玻璃杯を掲げ 干し

振り返る瞳に戦慄

杯を抱く指先が
俺の影を指す

「お前の影は 紅い」

笑みの形に唇歪め
彼は嗤った

逸らされた瞳に躊躇

玻璃杯は砕け
漆黒は崩れ落ちる


「お前の其の緋が
 私の色彩のすべて」


――彼は紅蓮に為った



2004.2.8(Sun)

「虚空」


空を仰ぐ
紅の月

地上を臨む
傷付いた大地

目に映るは 虚空


俺は

昔 魔島に居た俺は

もう、死んだのだよ。


自嘲気味に嗤って
呟きたくなった。



2004.2.9(Mon)

「物云はぬ焔」


書き綴った手紙を凝っと見る。

この決意が正しいものか
俺には判らない。

まだ、迷っている。

けれど

俺は

俺は…


……もう
何も解らない。



2004.2.10(Tue)

「氷」


昨夜
一つの決断をした

それは限りなく離別に近く
それは限りなく永劫に近く

友の姿を目に焼き付け
背を向ける


最早揺らぎ無き意思と共に
手にするのは絵札

この上もなく
おぼろげに
優しげに

過去へ 未来へ
微笑みかける


絆を 終わらせよう。



2004.2.12(Thu)

「RavenShadow」 ふとした拍子に/気が楽になる//憎悪限りなく 尚/いとおしき魔の郁//翼を広げた影烏は 未だ/中空に留まったまま//ならば 腕を掲げ/高く 名を喚ぼう//魔の心 我に在り/邪炎の灯火 此処に在り//静かに けれど力強く/繰り返し謳おう//魔の心 我に在り//静かなる闇の内//魔島の心 我らに在り


2004.2.13(Fri)

「虚言」


まるめてすてた。

陽炎のような

まぼろし



2004.2.16(Mon)

「隠遁」


現を捨て
夢を封じ
幻に浸る

現世を祓い
叶わぬ夢見
無幻に沈む

逃避

だが
それがどうした?

手を伸ばし
此方へ来たれ

忘却の快楽を教えてやろう



2004.2.17(Tue)

「狂」


闇空へ向けて
一人 詩を詠う

薄く笑みを
唇に張り付かせ

はらり散る
梅の香を眺め

狂人を演じてみようか

ふと そう思った。



2004.2.18(Wed)

「ひとひら」


香りひとひら
ふわりと揺れて
名残惜しむは
儚い刹那さ




気持ちは凄く嬉しいが
もう少しだけ時間が欲しい
俺が俺で在れるような
もっと広い世界が欲しい
狂った焔が盛っても
ヒトを焦さぬ余裕が欲しい

有難う

俺は 消えない。



2004.2.19(Thu)

「」


刹那を願い
永遠を願い
擦れ違い続けて
また、今日も

薄れ行く意識と
感情の中で
思考が停止する

伝えられない
受け取れない

祈りは何処へ。



2004.2.24(Tue)

「鍵」


扉に錠をかけ
机に向かい

筆を取り上げ紡ぐ

傍らには酒と杯
玻璃の珠に硝子の灯火


心を絶つ
邪魔をするな


残り、五日。



2004.2.25(Wed)

「糸」


欲しかったものは
背預けられる相手

望んだものは
信頼という名の絆


俺は立ち止まる

未来を憎悪して



2004.2.26(Thu)

「破棄」


届かぬと知るが故に今

安堵して、囁ける

指先を伸ばし縋っても
届くことは無い

どれだけ名を呼ぼうと
振り返ることはない

そう知っていたが故に
安堵して想う事が出来た

金の瞳の黒き君

俺は貴方が好きでした


切ないほどに
狂おしく 甘く

それは恋より遠く


俺は「解放」を願った。



2004.2.27(Fri)

「」


夜闇に紛れて
懐かしき魔島へ降り立つ

漂い
流れて

変わっていないことに安堵と
そして一種の寂寥を覚え

この国は大丈夫だ
何故か、そう感じた

けれどふと
己が口をついて出た言葉に驚愕する

『裏切り者め』

俺は確かにそう云った

受け入れ難かったものの形が
漸く 判った


魔島を出 他国を育てる
かつての執政者たちへ問う

魔島である必要があったのかと

今だけは憎悪と嫉妬を込めて


魔島を 魔島民を殺したのは

…貴公等だ。


俺には
咎める義理も 権利も無いけれど。



2004.2.28(Sat)

「二律背反」


冷徹になり切れぬ
己を自嘲する

切ろうとしても切れぬ
縁の糸は 絡まり
そして解けぬまま

冷えた熱が偽りか
仄かな灯が偽りか
猛る熱情が偽りか

形定まらぬ焔のままに
惑い 迷い 躊躇い

瞳の鋭さが消えゆくを感じる


灯をうち消して

…すべては まほろば。



2004.2.29(Sun)

「桜」


云われて思い出した
出逢ったのは桜木の元

けれど当然の如く
俺の眼には黒以外映る事はなく


闇夜の桜


これほど手間取るとは思わなかった

予想の範疇だったのかもしれない

だから俺は心を断ったのだろう


何も言わず
何も告げず


そうでなければ振り返ってしまうから。



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