2004年3月
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2004.3.1(Mon)

「」


俺が嫌うもの

嘘と偽り

約束を違えること


だから俺は消えない

例え心が死のうとも。



2004.3.2(Tue)

「」


花に酔い
薫に酔い

詩に酔い
月に酔う

散りかけた梅におぼろ雪
土に触れて融けゆく白


酒は無くとも心は酔える

今は一人

一人で在りたい。


伸ばしかけた己が腕を引き寄せ
冷たい夜気に身を晒す

心地良く


誰とも分け合えぬ静寂を
少し哀しく思いつつ。



2004.3.4(Thu)

「」


振り返らぬため心を捨てた

立ち止まるのは何の為


無責任な優しさなら

与えぬ方が良い


貴方は俺を憎めば良い

そうすれば仮面を外さずに済む


卑怯な言葉だ

届かぬと知るから 言える。



2004.3.7(Sun)

「朽ちゆく炎」


盛る紅蓮の先端
褐色に色褪せて

崩れて落ちる
はらはら はらはらと

滾る紅蓮の瞳
漆黒に鎮まりて

眺めて嗤う
ゆらゆら ゆらゆらと

燃ゆる緋の指先
灰辿る影の輪郭

愛おしげになぞる
熱を 色を

セピアに染まる
夢を 理想を 言霊を。



2004.3.8(Mon)

「黒」


半身の仕官国を目にし
開戦国を目にし

押しかけるように
衝動的に接見をして

不恰好な片翼を担った心算でいたが

どうやらそうではなかったらしい

漆黒
黒髪
黒い瞳と黒き翼


そうか。

やはり俺は

黒に固執しているのだ。

2004.3.10(Wed)

「花」


背に凭れて空を見る

ちりばめられた星辰
僅かに春を含み過ぎ行く風
幽かに漂う花の香

盃を片手に 一息

心地好く、安らげる…

このまま委ねてしまおうか


俺はどうも
少し、疲れて居るらしい



2004.3.11(Thu)

「緋」


目を閉じる
閉じた瞼に指を添え
形をなぞり
炎を点す

尽きせぬ紅蓮
この眸は何を見る

空を見上げ花の香を見送る

伸ばした指先へ 風が触れた



2004.3.15(Mon)

「」


ひとり。

月を眺める

静かに静かに

静寂に身を任せて

鎮まりゆく炎

身に収めて

…一人。



2004.3.17(Wed)

「」


空を見る

皓月が見返す

紅の月は 遠く

手を伸ばすことも叶わず

自嘲する

俺は何を焦る?

考える時間は
幾らでもあるではないか。



2004.3.18(Thu)

「微睡み」


薫風に目を覚ます

気付けば 雨

肌を刺す雫
指先で掬い取り

微かな音を聞き
微かな痛みを覚える

窓際に腕投げ出し
小さく歌う

そんな時間も 幸せだと。



2004.3.19(Fri)

「」


降り積もった罪咎と因縁
因果律を変えるのは
命からすべて変えねば
叶わぬことなのかもしれない

輪廻転生の輪の中に
我と我が身を投じれば
絵姿も言霊も
記憶も友もすべて消え

それも良いかもしれないと

ふと思ってしまった


ただの 戯言だが。



2004.3.22(Mon)

「」


この身は既に魔のものに非ず
この心は既に魔に非ず
ゆえに我 魔島の民に非ず

己が禍にて失いし
うつろわざる焔



2004.3.23(Tue)

「夢宴」


互いに未練を引き摺って
互いに互いを望みながら

腕を伸ばすことはなく
振り返ることもない

砕ける刹那の氷像のように
危ういバランスを保ちつつ

背合わせのまま遠ざかる


「記憶に留めることの代価が
 未練だというのなら。」


俺は喜んで受け入れよう
いずれその痛みも甘くなる

手を伸ばしてはいけない
振り返ってはいけない

これで良いのだ
近付きすぎれば 俺はまた

誰かを傷付ける



2004.3.24(Wed)

「理由破棄」


二対の鳥を逃がし
書斎の扉に封呪を施す

すべての行動の支柱が消え
一人になる

まさかこんな形で
あの約束を果たすことになるとは

思いもしなかった結末に
知らず笑みが零れた


たった一人の君へ
ありがとう。



2004.3.25(Thu)

「挽歌」


気付いて居るか
過ぎ行く風よ

貴公はその言霊で
最後に己と俺を縛った

気付いて居たか
自由求める風よ

貴公が求めた永遠は
刹那の内にしか為されなかった


俺は貴公を求めない
俺は理由を求めない

睦言はもう要らない



2004.3.26(Fri)

「桜花」


桜の花が開き始めた
眺めながら思い出す

忘れるなと
生きてくれと

輪廻の縁は鎖か糸か

憎悪を残しても俺は忘れない
哀しみを与えても俺は生き続ける


桜が咲く
俺には悲しみも憎しみもない

うつろわざる炎



2004.3.29(Mon)

「」


遠く詩を詠う
誰にも届くことはない詩を
誰のものでもない詩を

静かに弦を爪弾く
誰の手も届かぬ場所で
誰一人知らぬ場所で


…ああ

殺してやる約束だったのに
守ってやれなかったな



2004.3.30(Tue)

「」


生き方も 歩み方も
想いはそれぞれ違うから
俺は黙って彼らの背を見送ろう

責める事も慰める事も
祈ることも願うことも
最早叶わぬ身だけれど

俺はただ 見送ろう
彼らが彼らの道を歩み続けるのを

憬れながら
嫉みながら

けれど心の奥底は
決して震わせることなく。



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