2004年6月
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2004.6.1(Tue)

「月琴」


月に楽を奏で
歌を口ずさむ

かつて紡がれた歌と
これから紡がれる歌

織りなして 錦

言霊に今一度
魂を 宿し

満つ月近い露夜に
楽を奏でる



2004.6.2(Wed)

「甘毒」


縋ることも
憎むことも出来ぬなら

いっそ
俺を憎ませて呉れようか

罵り嘲り
毀して狂わせて呉れようか

手を伸ばし追い縋れ

それが出来ぬなら 貴殿
諦めてしまえ。



2004.6.4(Fri)

「遥ニ観ル誘酔ノ月」


朧に浮かぶ幻燈の
うつろに微笑う眼差し

見入られて
魅入られて

月よ 月
俺はお前の下へは往かぬ

その麗しさは称えよう
なれども君

共に酔っては呉れぬだろう?



2004.6.7(Mon)

「まほろ」


目覚め無き森遠く越え
霧の湖畔を遥か渡って
土地なき土地の彼方へと

望郷の果てに辿りつく
名もなき街に其は佇む

謎めく主は語らない
蔵の所以と己自身を

黙する主は尋ねない
酒に紛れた真と嘘を

秘境の端の隠れ里
その蔵の名は 幻
主を夢現と 人は呼ぶ



2004.6.9(Wed)

「」


雨雫墜ツル
月ノ夜ハ綺麗

木々ノ端ニ宿ル
月雫ヲ想フ

雨ノ月ハ綺麗。



2004.6.10(Thu)

「」


憎悪の影に寂寥を
愛おしさの影に不安を
誤魔化し乍ら
生きて居る

甘い言葉に棘隠し
凍てつく声で真を紡ぎ
己と周囲を騙し乍ら

それでも俺は
生きて居る


壁を隔てて背中合わせ
墜ちぬように 前を向く



2004.6.14(Mon)

「錆ビタ鎖」


おまえとなら全て
越えてゆける気がする

背合わせのまま
過去へも未来へも


試してみようか
メジュラ―



2004.6.15(Tue)

「」


諦めの悪い奴は好きだ


いつかは と
繰り返し云い合った

だが訪れた「いつか」は
悲劇的で 喜劇的で

何となく 判る
糸の震えは気のせいではなく

きっと
貴方はもう 諦めている


諦めの悪い奴が好きだ
格好付けの理由など要らぬ
浅ましいほどに 足掻いて

そして笑え

誰よりも何よりも 誇り高く
美しく。



2004.6.16(Wed)

「」


中空で回転る
銅貨の裏表

変わる響に 貌に
翻弄されて 翻弄し

焔 揺れて
実像を結ぶ 夜


感謝せねばなるまい
味を知らぬ唇は だが

確かに酒の甘さを感じたのだから



2004.6.17(Thu)

「」


空を見上げる

グラスに注いだ
琥珀色の酒は

今宵見えない
月の代わり

静かに時を過ごす

不思議なほどに
心は穏やかで

緩やかに詠う



2004.6.18(Fri)

「」


彷徨いの墨焔
幻にゆらめき
夢にたゆたい
現に瞬く

黒き炎は気紛れ

歌を謳い詩を紡ぎ
消える軌跡を残しつつ

闇に混じる 熱
淡く消える



2004.6.19(Sat)

「緋の双舞」


月夜に灯る 紅色の
姿際立つ 緋の輪郭

軌跡を印し 一ツ扇
風と交わり 片絆

ひら ひら ふわり
とん くるり

描くは 縁 鮮やかに
時の彼方へ微笑んで


真昼に踊る 墨色の
影に潜める 緋の輪郭

円と閃き 二ツ扇
輪と重ねて 双絆

ひら ひら ふわり
とん くるり

結ぶは 縁 鮮やかに
遠い未来へ微笑んで

彩る残像 舞い踊る
繋ぐは 縁 緋の双舞


 草稿…語彙が少ない。



2004.6.20(Sun)

「」


ふらり ふらりと
彷徨う新月の夜

闇に滾るは
融けない炎

何の為に盛ろうと
どれほど焦がれようと

炎は 炎
変わることはなく

彷徨う破鏡月の夜

闇色の指先伸ばし
見えぬ輪郭をなぞる



2004.6.21(Mon)

「」


最近
笑うことが増えた 気がする

張り付いた皮肉気な笑みでなく

ただ それ以上に
人と関わることが減ったので

周囲から見れば
何も変わっていないと思う

幸いにも。


筆を構えてひとりごち
降りだした雨音に 耳を塞ぐ



2004.6.22(Tue)

「舞扇」


扇を片手に暫し悩み
倭人の真似事をして
くるりと舞ってはみたが

やはり俺には不似合いで
結局月琴を手に取る

部屋に戻れば花に月
楽の音に詩で色添えようか

幸い
訪れる人も少ないことだし。



2004.6.23(Wed)

「闇に喚ぶ声」


言葉交わす相手は少なく
姿見る相手も少ない
触れるものといえば尚のこと

夜も昼も過ごすは一人で
幾百の年月を繰り返した

それなのに

擦れ違い触れ合う刹那に惑い
伸ばしかけた腕を また


…大丈夫
少し

ほんの少し だけ

 ……



2004.6.24(Thu)

「酔月」


己が感傷を忘れたくて
酔えもせぬのに酒に頼る

情けなくなったものだ
俺も

告げられればどんなにか

…いや

忘れてしまえ
今宵の寂しさも
人恋しさも

すべては月と 酒の所為

嗤って杯を干し
夜空を仰ぎ 哄笑


―言えぬ言葉は
押し込めて 殺してしまえ



2004.6.25(Fri)

「」


遠くから漂う
夏の響

指先に灯した火を 戯れに
彩りを変えて 夜に遊ばせ

昨年は誘われて舟遊び
歌を連ねて 星空に花火

記憶は心に
思い出は魂に

刻み付け …さて、今年は?


鮮やかな季節に 乾杯



2004.6.28(Mon)

「」


目的など何もない
見据える先にも何も見えない

還る国など 土地など無い
歩み続け倒れたら
その地で眠る

それで良い

流されて彷徨い
迷いては漂い

だが

俺は確かに
此処に生きて居る。



2004.6.29(Tue)

「」


国は器
それとも魂

どの地に在りても
どの国に在りても

己が身と心を偽り
世間体を気にして言葉を選ぶ

それが国に所属する条件だとしたら



だからこそ 俺は
何処にも属さない この道を


国は魂
それとも器

俺が魂は
俺が内に



2004.6.30(Wed)

「」


雨 熄んで
朧月 漂う
応え無きうつろい
雲間の虹 遠く

形 消えて
月光 揺らめく
虚空へ響く鈴音
夜の闇 深く

今宵も深く 眠る



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