2004年12月
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2004.12.1(Wed)

「無音」


紡ぐ言葉も見つからず
奏でる音も見つからず

淀む思考もそのままに
身動ぎもせず眼を閉じる


…一人 か

届きもしない言霊は
空へ逃がして忘れてしまおう



2004.12.2(Thu)

「」


沈黙の夜に
一人 杯を傾けて
見えぬ月を空に探す

身体の奥
心の底深くまで
言葉と感情を押し込めて

夜闇に染まりかける
この身を己で抱き締める


何も考えるな
何も求めるな

手に入れなければ
望まなければ

失うことは無いのだから



2004.12.3(Fri)

「黒の月」


願ったものは未来
その先へ続く路
そしてその傍らを往く
掛け替えのないひと

闇夜の空で破鏡が嗤う
邪炎がその身には似合わぬと
望む縁も命の糸も
その手に触れて灰と化す

黒き焔と赤き血と
白き涙の交わるは

開闢にして終焉
時の輪の接するところ

其は鋭き爪月と似た
闇に残る 光の爪痕



2004.12.4(Sat)

「夜の雫」


空を滴り
天雫墜つる

絹糸のごと 音結び
琴弦のごと 震わせて

夜の涙は闇閉ざす

語らぬ月の夢を求めて
逢えぬひとの影を求めて

雫の残した傷跡を
一人 闇夜に辿ろうか

軌跡は虹為し 彩描く
果てに来れる 朝願う



2004.12.5(Sun)

「」


眠る刹那に絆を感じた
融けるでもなく
触れ合うだけでもなく
繋がる感覚

輪郭を辿る指先
その先にある存在
温かくいとおしい
生命の滾り

邪炎が熱にも揺らがぬ
穏やかな感覚に目を閉じた
不思議と懐かしく
けれど 感じたことのない

それは恐らく
安らぎと呼ばれるもの



2004.12.6(Mon)

「」


閉じた瞳のその奥の
封じた過去を解き放ち

見えぬ瞳のその先に
見果てぬ未来を夢見てる

Glückliches Ende
終わる幻など欲しくない


その先を求める限り

苦悩は 苦痛は
きっと終わることは無い

それでも

終わらぬ時間のその先を
俺は確かに 願ったのだから



2004.12.7(Tue)

「白夜」


それが俺の罪と云うなら
憎悪も怨恨も甘んじて受けよう

貴方はどうか幸せに
それは 潰えた契約ゆえのものでなく
逆にその契約無きがゆえに
どの枠にも囚われる事なく
貴方という一己の存在へ願うこと

永遠など 俺は望まない


終わらぬ夢はうつろわぬ現
俺が焔は触れ得るまほろば

絶えた舞歌 過去のうたかた
貴公が舞いは触れ得ぬまほろば



2004.12.8(Wed)

「紡ぎ歌」


遠く聞こえる音霊の
糸拾い上げて歌紡ぐ
響くは音彩 過去の泡沫
揺れて流れるその音色

遠く聴こえる言霊の
糸拾い上げて詩紡ぐ
奏でる言の葉 潰えた祈り
虚空に響くは汝が声

時より遠く 尚遠く
遥か未来へ届く程
音と言葉で糸を為し
繋げて織り成す薄絹の
影に残れる君が面
紡ぎて詠う 時の織歌



2004.12.9(Thu)

「宇宙樹」


夕暮れを背に
オルトゼスの城門を出る
結局、国内で発言することは
一度として無かったのだが

お陰で大分と休息を摂ることが出来た
心労の種も 幾つか消えたし
一つ増えた気もするが

出国間際に街を回って
見つけた番傘 一つ
肩に担いで酒瓶抱えて


入国は新月の夜になるだろうか
水と海は嫌いだが
夜の海を眺めるのは好きなんだ

空にも地にも星が見える



2004.12.10(Fri)

「」


海路を往く
耳そよぐ波音と
慣れぬ潮の匂い
湿気を多く含んだ風

何故だか 眠りたくなくて

新月の近いこんな日は
月の名を持つ琴を奏でて
揺れる波間の月と代えよう

夜に風が凪いだら
音を止めて
空と海とに散る星を
一人眺めるも悪くない



2004.12.11(Sat)

「Lunatic - Hi」


気付けば大分前から
空を見て 月を見て
その話ばかりしている気がする

月を眺めるのが好きという
そういうわけではないのだが

見続けると気が狂う
そんな伝承も
 偽りではないのかもしれない


今宵 月の無い夜
夜の海にたゆたう星

黎明の間際に出る月と
刹那邂逅出来たら そのまま
真昼の月と眠ろうか



2004.12.12(Sun)

「」


見えぬ何かで戒められて
動けぬままに支配され
自身が自身で無くなるような
そんな感覚に襲われた

伸ばした先には何もなくて
それは俺が選んだ道ゆえに
力無く 落とした腕
諦めと云う言葉は甘美で


…思い出すな
過ぎ去った幾つもの幻影
封じていた幾つかの記憶

見えぬ月よ
 今夜だけで良い

俺を狂わせ
 すべてを忘れさせてくれ



2004.12.13(Mon)

「」


温めに燗をした酒を
独り 窓際で傾ける
立ち上る香り
口に含めば 微かに甘く

今 俺に解る味は
それしか無い

おそらく俺は
世界の半分の事象さえ知らない

痛みも味も知らなかった
その欠片さえも意味さえも

貴方に出会う迄は



2004.12.14(Tue)

「」


かつて
自信に満ち満ちて
黒き大地の民さえ導こうとした
あの頃の俺は何処へ行ったのだろう

我こそ邪炎
黒き焔

そう言って高らかに笑った俺は


ふと思う
闇生まれの出自を詛うこともないと
おれは 俺で

それだけでいいのではないかと


気は持ちよう、とは良く言ったものだ
すべての事象が根本から
 解決されたわけではないが


躊躇うことは無い
俺が俺である限り
俺は壊れる事はないのだから



2004.12.15(Wed)

「」


一旦思い出してしまった感覚は
なかなか消えなくて

意識より先に身体が求めた
黒き亡霊を

求めているのは黒じゃない
求めてるのは亡霊じゃない

渇望に気が狂いそうだ


俺に残った最後の路
歩みを止めれば おそらく
二度と前を見ることはないだろう

だから前を向く
歩みを進める
たとえ その一足ごとに
俺の一部が消えようとも。



2004.12.16(Thu)

「」


風の吹く夜 欠けた月
向かい風に煽られて
揺れる視界に 破鏡の影

鋭利な刃のその月が
天儀の淵より墜ちたなら
空と大地を切り裂いて

その軌跡より零れる
闇に棲む黒きヒカリ
溢れて 滴って

艶めく漆黒に世界を彩る
音さえその色に染められて

現はさかしまとなる



2004.12.17(Fri)

「」


空と海とに星は溢れて
波間に揺れて千々と散る
暮れゆく黄昏 若い月
見送り揺れる夜の灯

果てまで闇に彩られ
吐息の眠りに夜を知る
風凪ぎ静寂が満ちる時
帆軋む音のみ木霊する

黒き夜更けに 闇往く浮舟
水妖精−ナンフ−の誘う惑わしの
歌に惹かれて彷徨うごとく
ゆらり 揺られて漂いながら

動かぬ揺篭 満天の星



2004.12.18(Sat)

「」


夢現 微睡みながら
来ぬ人を待ち 月望む

瀬戸際で踏み止まる感覚
研ぎ澄まされた銀色の
刃が満ちるに嗤う

負の思いこそ邪炎が糧
ならば己のそれさえも
俺は喰らって生きてやろう

ゆめうつつ 魔睡みながら
来ぬ人を想う ただ強く



2004.12.19(Sun)

「」


薄紅色の雲が滴る
見上げた空は夕暮れ

刹那 色彩に溢れて
刹那 瞬いて
そしてまた色は朽ちる 薄墨に

白は白でそれ以上にはなり得ず
黒は黒で深みを増す
輪郭を象るは濃淡のみで


垣間見えた一瞬の奇跡に
行き所のない感謝を捧げた



2004.12.20(Mon)

「」


夜半に眺めた西空の月
闇に掛かる虹の幻影
影落とす月光の夢
儚く消える泡沫

青く碧く 揺れて
風に吹かれて漂う

琴弦の音に震え
海鳴りの響に弾け
闇に漂う想いの果て
深く秘めた融けない炎



2004.12.21(Tue)

「」


指先を琴弦に遊ばせて
ほろほろと 零れる音に浸る

詩でなく 声でなく
こうした音に惑うのも良い

墨色雲の漂う空
賑やかな街の灯

静寂が恋しい



2004.12.22(Wed)

「」


出口の無い空間を漂う
閉じこめれた風のごと
詩紡げぬまま彷徨う

浮かんで消える言霊は
すべて色褪せて揺れて
此の心弱きを嘲笑う


言霊に命があるのなら
紡ぐ声は 音は力となれ
魂を抱いて奏でよ
届かぬままの熱を 心を



2004.12.24(Fri)

「」


不死鳥の色した杯を干して
満ちゆく月を眺めた

流れる雲に想いを乗せて
あの月は幾つの願いを
その腕に抱いているのだろう

願いに満ちて
路示す光を零し
繰り返し繰り返し

墨色の炎を空に翳し
道行く月を眺めた


願わくば 月よ
貴方にも今宵の幸せがあるように



2004.12.25(Sat)

「」


真円に近い月を見上げて
零した溜息一つ 透明に
冷えた龍笛に唇押し当て
高く奏でた 空の音色

天に媚びず
地に染まらず
自由に翔る龍の声

やがて音は立ち消えて
余韻のみ静寂に木霊する
冷えた夜空に呟いた
届くことのない言葉 心

救いの手は何処にもない
…どこにも

空は

俺には 遠すぎる



2004.12.26(Sun)

「if」


貴方の隣に居る人が
俺でなくて良かったと

もしもいつか言う日があれば

それは多分半分本当で
半分はきっと強がりなのだと

そうして笑って
小さく笑って

それきり貴方は喋らなかった


死神と闇に愛されたひと
それゆえ誰も愛せなかったひと

貴方の気持ちが少し 解る



2004.12.27(Mon)

「躊躇う月」


空に映った水面に浮かぶ
朧 霞める夜半の月

風に薄雲吹かれて揺れて
零れる光は木漏れ陽に似る

夜の陽炎 月の影
抱くは泡沫 空の夢

雲間に瞬く星と煌めき
煙る吐息に紛れては

闇往く夢は輝いて
闇に奏でる白銀の詩

薄絹雲にその身を包み
十六夜月は星を眺めて

微かに響く詩を聞き
震えて揺らす 空の水面を



2004.12.29(Wed)

「夜硝子」


夜を渡る声
空を渡る色

遠く彼方へ散りばめられた
夜の硝子の音を聞く

きらきら響くは星の声
さざめき過ぎるは風の歌
張り詰め通るは月の音
静かに広がる静寂の闇

夜色硝子に描き映すは
不変で果て無き時の青



2004.12.30(Thu)

「鏡の眸」


忙しなく過ぎる時の傍らに
変わらぬままの何かがある

それは大分前から 俺と共にあって
何を求めるでもなく 強要するでもなく
ただ黙って俺を眺めている

その色に映し出される
罪と祈りと
俺の知らぬ 俺の心


紅の色をした影
幾百の年月を経ても
変わらぬままの俺の影

この謎だけがどうしても解けない



2004.12.31(Fri)

「黎明ノ詩」


凍てついた夜の隙間より
零れ来る時のかけら

ひらり 舞い降りては
白く大地を染める きらきらと

張り詰めた古き時の糸
途切れて余韻為す 音彩

ふわり 響き渡る
音無き音の木霊 ゆらゆらと


静寂の闇に時は生まれる
果てなく続くその存在に
願う
遙か未来へと



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