2005年1月
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2005.1.1(Sat)

「」


静寂を抱いて 夜は眠る
彼らは決して目覚めることはない

悠久の時の果てしより
永劫に続く遙か久遠まで

甘く優しい 死にも似た
静かな眠りに就いている

夜は夢の生まれる時刻
生まれた夢が現になるまで

俺は歌おう
闇に灯る 炎の檻歌を



2005.1.2(Sun)

「」


己から動こうとしない者に
変化は訪れない
ましてや 救いなど

けれど

動くことの出来ない者には
一体 いつ 変化が
救いが与えられるのだろう

動けぬことは無いとも思う
出来るか出来ないかではなく
どれだけやりたいかだと

俺は変化を 未来を望み
そして動こうと思った
少しは進んでいると思う

…それで 良いような気もする



2005.1.3(Mon)

「」


求めたものは
純粋なる黒

穢れ無き白の静寂にあって
染まることなく毅然と佇む

漆黒の記憶
すべてを内含する色


ああ 昔 そんな話をしたね
俺は黒 飛竜は白
どうしても相容れないのだと
笑い交わして


俺は純粋なる黒でなく
ヒトは純粋なる白でなく

だから美しく哀しいのだと
名を呉れた詩人は云った

『だから私はヒトを愛せる』

そう云って彼は微笑った



2005.1.4(Tue)

「」


罪なら抱いて生きている
純白の心などドコにもない
光る泥を愛して生きろと

どこかで聞いた言葉
虚飾と虚構に満ちた
空っぽのままの言葉

綺麗なモノは好きだ
だが

飾り立てられ誤魔化された美などに
俺は魅力を感じない

真にいとしいモノならば
腐敗したその身にさえ口付けて
俺はきっと囁くだろう

その醜さも美しさも
俺がいとおしんだものだと



2005.1.5(Wed)

「」


独立騒ぎに 呪竜
国が一つ落ちたとの話も聞く

公を映さぬこの隻眼で
失望を覚えた世界を目にして
相変わらずの様相に
小さく溜息一つ

何処に居ても変わらないのだ
今の世界では

故郷も帰る場所も最早要らぬ
俺は俺であればいい


我こそ邪炎
黒き焔の触れ得るまほろば



2005.1.6(Thu)

「酔夢」


揺れた視界に夢を見た
空けた杯 玻璃の向こうに
今と変わらぬ平穏の夢を

変わらぬ姿で命に添うて
薄紗越しに笑う己に
小さく笑い返して

目を閉じれば揺れる意識
けれど言葉は発するまい
多分心の制御が効かない

眠りに任せて 誘われるまま
刹那の酔いと夢に浸る

まほろばの見る夢
やがては現になるのだろうか



2005.1.7(Fri)

「」


祈りの言葉を呟いた
何て空々しい

俺が言霊は永久に自由なもの
捧げられるべき対象は無く

そして等しく
誰かを束縛するものではない

言霊は魂を裏切らない

俺がこの身に たとえ
生命と呼ばれるべきものが
 無かったとしても


祈りの言葉を呟いた
俺が言霊で願いを



2005.1.8(Sat)

「re-birth」


横になって空を眺めた
月はまだ昇らない
俺は星を繋ぐ

闇の空を翔る
白き狼の形を為して
煌めき渡る星に

手を伸ばして
小さく感謝の言葉を呟いた


―Happy ReBirthday.

存在をありがとう



2005.1.9(Sun)

「」


虚ろな瞳も影さえも
紅に染まる時がある

過去でも未来でもなく
知らぬ痛みに怯える刹那

隻眼からは墨色が
足下からは紅が
滴り落ちて影作る

黒に縁取り赤に染め上げ
其処に映るは俺が罪か
紅蓮の宿すは俺が咎か

闇は全てを内含し
そして今宵も笑う



2005.1.10(Mon)

「白い空」


見上げた瞳に焼き付いた
木漏れ日のシルエット
垣間見る空は 白く

見えることのない青の空
灰色にくすむ昼の色
いつからか焦がれた

空が見たいと

光の色の眸を捨てて
手に入れた己の漆黒も
その刹那忌むべきものに
そう思えて

一人嗤った

俺は邪炎 黒き焔
それだけで良い



2005.1.11(Tue)

「狂花」


見に行こうか、貴公
云いかけた言葉を呑みこんだ

開き切らぬ花の香に混じって
微かに漂うのは 忘れもしない

確かこんな夜だったと
刹那思い出して

貴方 俺を責めるだろうか
それともいつものような笑みを浮かべて
黙って姿を消すのだろうか


開きかけた桜の蕾に熱を与えた
狂い咲け 薄墨桜 あの夜のごと

そしてもしも叶うのなら
幻惑を統べるひとに一夜のまほろばを

忘れやしない
貴方の幸せを願う



2005.1.12(Wed)

「serenade」


真昼の空に高く
薄く鋭い月は昇り
闇より月に焦がれて
また見えぬ月を嘆く

闇に囀る夜啼鶯
一人遠く天へ啼け

低く 甘く
響かせる夜の声
小夜曲のごとく

闇に紅唯落とし
焔は鳥の声を追う

細く かそけく
奏でる琴弦の音
星辰の瞬きのごと

途切れ 途切れに
闇夜の静寂を詠う



2005.1.13(Thu)

「」


夕暮れ 沈む月を見送った
銀色の刃は 細く、細く
紅の空に白い笑みを浮かべて
やがて薄墨色の雲に融ける

来る夜空は静寂を湛えて
闇の黒を照らすこともなく
ただ遠くから 囁くように
さざめく星の光を宿す

杯を掲げた腕を伸ばした

思い出が翻って

見開いた目に

多分 あなたは気付かない



2005.1.14(Fri)

「」


緩やかに時は刻まれて
僅かずつ事象は変わる

引き攣れた傷痕に走る
甘く緩やかな感覚
拒絶と否定の
忘れえぬ記憶

停滞の時の彼方へ
刻まれた痛みを流して

焦がれて止まない熱と
声と言葉とを 忘れ置く



2005.1.16(Sun)

「」


雨上がりの夜空
見上げた先の朧月

光の半ばを喰われたような
七日の月に溜息一つ

見えぬ破鏡に酒を満たそうか
満ちて溢れて酔いが回れば
やがて誘酔(いざよい)

月は
闇空に浮かぶ白金の盃



2005.1.17(Mon)

「」


冬の風が吹きぬける
切り裂くような音させて

冷えた空には凍える星
月は白く 薄く笑む

木枯らしの冷たさに
感じるのは己の体温

ヒトのそれより高い熱を
弄ぶように風は撫でて

刹那忘れた その感覚を思い出す


グラスの縁を指で辿った
爪先で弾いた その音が

なんだかやけに温かかった



2005.1.19(Wed)

「」


届かぬ想いを嘆いた
グラスに注いで干すそれは
流せぬ涙と血の代わり

不死鳥の名
紅蓮の色の酒
杯を仰いで空を眺めて

己が己であることを忘れるな、と
小さく呟いた

俺は多分
どのようにも変わって行ける
それこそ

求める人の望むままにでも

けれど
望まれたのはそうじゃない
俺が望むのはそうじゃない


俺は…

 …俺は 誰だ?



2005.1.20(Thu)

「白い月」


夜の空に浮かんだ
純白の月に

一瞬 闇に宿る色さえも
俺の視界から失われたのかと
そんな不安を覚えた

街の灯に目をやった
色彩豊かなそれに
小さく安堵の溜息を漏らす

何かを失うのは 怖い
けれど

終わらぬものがどこにあるだろう

変わり続けても良い
決して消えない何かは
あの月のように

……ああ

月も見えなくなる

喪ったと思ったものがすべて
「見えなくなったもの」であれば
どんなにか俺は救われるだろう



2005.1.22(Sat)

「」


途切れがちの手記を開いた
言葉は幾つか浮かぶ
文字を描く気力もある

それなのに 何故だろう

零れ落ちる言葉は
悲壮に満ちたものばかり

拾い上げられても
己からその指先をすり抜け
また暗きを求めて
その暗さに慟哭する


求めているのは 赦しではなく

与えられるべき罰なのかもしれない


傷付くべきは俺
追いつめられ引き裂かれ
苦しみ足掻くべきは俺

それでも

俺はきっと笑うのだろう
あなたが居てくれるならば
それが俺の至福だと



2005.1.23(Sun)

「」


痛みに慣れることはない
痛みに慣れる必要はない

甘い痛みなんてない
望んだものと与えられたものは
いつも少しずつずれていて

その差異の隙間を
俺はいつも諦めで埋めて

大きくなるその隙間に
いつも気付かぬ振りをして

叫んでも足掻いても
手を伸ばしても届かない

そんな距離になって 漸く
小さく溜息を吐く

傷付きたくも傷付けたくもなかった
焔に近付き過ぎれば傷を負う
届かぬまま触れ得ぬまま
それがおれの在り様だと

おかしな話だ

糧も無く燃え続ける焔など
一体どこにある?



2005.1.24(Mon)

「」


気付かぬうちに
口元に貼り付いた笑みを拭った

満ちた月は 今は
何故だか見る気になれなくて

何を感じて何を思えば良いのか
そんなことさえ解らないまま

目を閉じて身を横たえた
少し休もう

笑えるように
己の意思で立てるように
先へ進めるように。



2005.1.25(Tue)

「」


雨音に起こされて
白く煙る景色を見やった
墨絵のような風景
満ちたはずの月は見えず

闇夜を照らす月は見えず
路定める為の星も見えぬ

詩紡ごうとした唇はそのまま閉じた
音紡ごうとした指は床に落とした


雨の夜に一人

雫の音は何も語らない



2005.1.26(Wed)

「月ノ雫」


満ちた月の白は
溢れて零れて

夜闇を渡る雫を伴って
凍えた光になる

淡く儚く
鋭く冷たく

熱ある闇の及ばぬ先で
白く 白く

遠い昼間の光
陽光と似た面影

どうか白に凍えぬように



2005.1.27(The)

「陽ノ涙」


日陽の落とす影は
緩やかに空を融かし

昼色の天を焦がして
落陽の薄墨となる

昏く熱く
深く緩やかに

熱無き光をかき消すごとく
黒く 黒く

触れえぬ月光の影
闇夜に惑う魂

どうか黒に溺れぬように



2005.1.28(Fri)

「」


ふと思いだした
境壁に囲まれた窪地
あの場所はまだ 黒き大地に
残されているのだろうか

残っていたところで行く術もなく
また行きたいとも思わないが

思い出の墓場のようだと
らしくもなく
そんなことを思った

…くだらない



2005.1.29(Sat)

「」


何故だろう
雨の音が心地好くて

締め切った部屋の中
音紡ぐこともなく
激しさを増す雨音に聞き入る

空が泣く

何故だろう
雨の空が明るいのは

嗚呼
空が啼く



2005.1.30(Sun)

「」


それは不意に襲い来る
身の内に封じた紅蓮が滾り
身体の芯を 奥を焦がす

思考は甘く痺れ
閉ざされた視界に過ぎるは
蠱惑に満ちた幻影

絡む熱を感覚を求めて
延ばしかけた腕を引き戻した
引き込まれかけた意識を留めた

幻から目を醒ませ

己が身はまほろば
けれど

生きるは現

現を求めよ



2005.1.31(Mon)

「」


夜半を過ぎて
昇る月を眺めた

刹那 過ぎった影に
気付かぬ振りをして

己の熱で温めた杯を
小さく空に掲げた

紅に 薄紅に
揺らぐ雫は滴って

身の内で滾り 燃えて
吐く息は刹那紅蓮に
やがて墨色に

虚ろな目に映る
何もナイ 風景

それが現

これが俺の知る世界



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