2005年8月
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2005.8.3(Wed)

「揺レル炎」


朧気に
不確かに

月のない夜 焔は揺れる

彷徨うように
誘うように

己が心の内 映すように

途惑いながら
躊躇いながら

夜に灯る闇色 探るように

その唯一の存在を
確かめるように



2005.8.5(Fri)

「」


新月
新たに生まれる月

闇夜を過ぎて 夜明けの空
破鏡の月の 静かに昇る

光から逃れて
生まれし後の静寂に浸り

黎明の空にひとり
透き通る その身を委ねる

夜明けと共に産まれ出ずる
光持たぬ月

その真の姿



2005.8.8(Mon)

「」


三日の月 過ぎて
悖りゆく 空の瞳
ひとつ ふたつ
筆を重ねて
真円を描くよに
光重ねて 闇に咲く


三日の月 巡り
爪伸ばす 白き指先
ひとつ ふたつ
夜を重ねて
深淵に誘うよに
艶増して 闇に融ける


妖かしの月 導く
幻惑と夢幻の刹那
ひとつ ふたつ
吐息零しては
光宿す細い刃
現を断つ



2005.8.10(Wed)

「」


黒く満ちた月の 白く欠ける
闇夜に横臥する影 照らし
薄く笑う 細い光

紅に焦がすように 吐息して
弱き月の光遮り 影抱く
この存在を照らすは

黒き邪炎 墨焔

月も 太陽も要らぬ

この俺の焔 それだけでいい



2005.8.12(Fri)

「遠雷」


石壁叩く 夜の雨
窓震わせる 遠雷

劈くような音させて
空を裂き 地を焦がす

雫と混じりて絶えぬ炎
鋭く白き 稲妻の火


雷光のごと 鋭く冷たく
闇の刹那を走り抜ければ

この身も傷付かずに済むのだろうか

触れるものすべて
刹那のうちに灰燼と化して?


…出来る筈が 無い



2005.8.17(Wed)

「」


闇に一人 月灯り探して
出会う 彷徨う残像

現の先にある未来を
まほろばのこの身は望むが

擦れ違う 記憶のヌケガラ
そのすべてが嘲るようで


足を留めれば
追い縋り誘うように

背にした「かつて」から
闇色の腕が優しく手招く


小さく笑った
戻らない 戻れない

俺の居場所は そんなとこじゃない



2005.8.19(Fri)

「」


豊穣の月 過ぎて
黒欠けて白く満ちる夜

束の間の現を堪能し
幽鬼たちは闇へ還る

名残を惜しむは人の子ばかり


過去 幾つも屠った
魂持つものたちの群れも

尽きせぬ怨を尾引かせて
終わりなき混沌へ還る

後に残るは腐臭に似た気配


墨色の焔灯し
満ち行く月に掲げた

この夜に一つ
白く透き通る月が
唯憎くて



2005.8.23(Tue)

「」


ひとつ ふたつ
ほつれゆく 意識の糸

縺れたそれは いつしか
解れ また混じり合い

一つの意図になる


抑え込むことすら出来ない衝動と
先へ進むことも出来ない恐怖

両辺から引かれ 張り詰めた糸は
未だ弛むことはなくて


揺れて 弾かれて
甲高い響で啼く

狂気さながらに

アナタが欲しいと



2005.8.25(Thu)

「双舞」


絡み合う
焔の紅
闇の黒

巡る軌跡は
情交の形為して
緩やかに咲き誇る
夜の裡に

両の腕(かいな)を伸ばし
引き留める 双つの存在に

己が向くべき路も見失いかけて
途方に暮れる


三つが描くは 調和の絆
けれどそれは
互いが互いを同じ力で想ったときのみ

叶うことのないゆめまぼろし


断つべきは 縁や絆でなく
己の迷い



2005.8.31(Wed)

「」


心を殺そうか
身体を消してしまおうか

世界を閉ざすか
音を手放すか

貴方を追う足を
縋る腕を捨てようか


どこまで

一体どこまで 追い詰められれば
その限りは見えるのだろう


…もしも 叶うなら

あのひとの望む 俺の一部が
彼のものになるように

他の誰の手にも渡らぬ
彼だけのものとなるように


詫びとは 言わぬ
そうではなく

それだけの重みがあったのだと
せめて 伝わって欲しいから



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