劇団新感線 髑髏城の七人〜アオドクロ  観劇レポートもどき(前編)

2004.10.09 劇団☆新感線 秋公演:髑髏城の七人〜アオドクロ(日生劇場 18:30〜 公演)
※ネタバレ注意!
※記憶だけで書いているので、一部科白等が間違っている可能性があります。今回は台本売ってたのですが、なんか科白が違うのですよ…

 気合入れすぎた結果、チケット三公演分も取るという暴挙に出た今回の公演。
 今回は内容も頭に入っているので、予習も期待もバッチリです。
 10/9、台風直撃という状態にもめげず…行って参りました、劇団新感線秋公演「髑髏城の七人」!!

 あ、今回の感想は導入省きます(笑)。

●開演前
 当日はえらい雨でした。台風直撃だそうで…それでも出掛ける自分阿呆だなぁ、とか、心のどこかでツッコミを入れつつ、前回の一時間半前到着を上回る二時間半前に到着です。いくら何でも気合いの入れすぎな気がしますが、不可抗力なのです。
 食事をしつつ、激しさを増す雨風をぼんやりと眺めつつ、していると、いつのまにやら開場時間。

 今回はさして会場前ロビーも広くなかったので、少々人に揉まれつつ…配役の書いてあるポスターが見あたらなかったので(壁半面?に張られたドでかいポスターは目に付いたのですが)、入口で配っているチラシで配役のチェック……どれどれ。
 結構詳しく書いてありますね。カンテツって誰。

 役者が変わるのは知っていましたが、今回役名も幾つか変わるのですねぇ。
 変わっていないのは主要メンツくらいでしょうか。
 一応、一通り挙げておきますと……

・玉ころがしの捨之介 − 市川染五郎
・沙霧 − 鈴木杏
・無界屋蘭兵衛 − 池内博之
・極楽太夫 − 高田聖子
・カンテツ − 三宅弘城
・裏切り渡京 −  粟根まこと
・狸穴二郎衛門 − ラサール石井
・こぶしの忠馬 − 佐藤アツヒロ
・鋼の鬼龍丸 − 高杉亘
・乱の剛巌丸 − 小村裕次郎
・刃の非道丸 − 川原正嗣

 結構雰囲気が変わりますねぇ。えーと…魔母衣衆ってのは…天魔王お付きの女性陣でしょうか? 謎だ。
 や、粟根さんが裏切り三五…もとい渡京ということは、最後まで舞台上に居られますねっ! これは嬉しい…最近チョイ役ばかりで(しかも途中で死ぬ)寂しかったのですよ。
 って、あれぇ? 川原さんが服部半蔵じゃない。逆木さんですか。川原さんは敵役に回っています。
 頂いたチラシを捲って内側を見ると…今回、劇中歌はどうやら8曲ある模様。アカドクロでは歌らしい歌はなかったので、これはちょいと愉しみですね。これでこそ新感線、ですな。

 そうこうしつつ席の方へ…思ったより会場が狭いのですね。少々古い劇場なのか、前三〜五列の椅子が少々低い位置にあります。舞台と頭の位置が一緒…ちょいと見えにくいような気もします。それだけがちょいと心配ですね。
 舞台自体の広さは結構あるようです。奥行きは前回の方がありますが…お馴染みの花道も横に。

 さて…そろそろ開演でしょうか。例のハードロックは……ああ、流れ始めましたね。やっぱりこの辺で身構えてしまいます。愉しみだなぁ!
 おや。今回は照明、青がベースなのですね…良い感じです。



●一幕
 立ち回り…かと思いきや、舞台奥に映し出される映像。わ、プロジェクターですか! 映像技術も進歩したものです…
 本能寺の変のシーンをダイジェストに映画のように演出。春公演、アカドクロでカットされていた本能寺の変のシーンが復活した感じですね。
 映像から舞台へ切り替わり、信長の首を探す秀吉の部下(らしき忍び)。そこへ、青白い光と煙の演出に彩られて、その姿を現す信長…いや天魔王。うわ、マントが格好ええ! 赤の天魔王は黒ベースでしたが、今回は白銀(っぽぃ)鎧に銀と白のマント。マント着けると格好良さ120%増しというのはやはり本当だと思います。
 歌って踊る天魔王………えぇ!? 染五郎さん歌うんだ……と思ったら、歌は歌ってませんでした。仮面つけてましたしね。踊りの方はさすがに激しい動きはせず、歌舞伎の舞いのようなゆるりとした動作でしたが…美しい!! 何ですかその不思議な色気は!


 時は流れ…漸くアカドクロと同じような出だしですね。けたたましい物音と共に(「たーぁすけてけろー!!」)駆け込んでくる見知らぬおっさ………あ、あれ?
 さ、沙霧は…!? おらの大福が、お地蔵さんがー!とか叫んでいる場合じゃないですよ! おのれ見知らぬおっさん、沙霧を何処へやった!
 …とか思っているうちに登場する浪人こと、狸穴二郎衛門。おお、なかなかいい味出してますね。見知らぬおっさんに大福を押しつけられて丸め込まれている辺り、タヌキ親父の面目は何処へやった、という感じですが……
 見知らぬおっさんが去ってから、漸く沙霧の登場です。やや、鈴木さんの沙霧もいい味出してますね。おそらくはアカドクロの彼女を意識しているのだと思いますけれども。「ちっくしょう!」と叫ぶ言葉に違和感が無い辺り、いい感じです。
 沙霧を追って現れる関東髑髏党の一人・鋼の鬼龍丸。でっかい剣を二本背負って、兜は龍を模したもの。こちらもそれなりに格好良い…とか、思っていたら。
 よく見ておけ!とばかりに橋の上の鳥を撃ち落とし…代わりに現れたは、…焼き鳥!? 焼き鳥になってる…!とか感心してる場合じゃないよ!(笑)
 地蔵が邪魔なら叩っ切るまでよ!と切られるお地蔵サマ。…ところで何でお地蔵サマなんだろう、とか思っていると、いきなり巨大化する地蔵! いや…待て……それは幾ら何でも不自然だろう…! 既に此の辺りで笑い死にかけてます。
 そこへ響く謎の声。

「おやめなさい。女苛めるのは、このお地蔵様が許しませんよ…!」

 一瞬、声の高さに粟根さんだと思ってしまいました。…が。
 手下その1によって真っ二つに切られる巨大化したお地蔵サマ。(「このバケモノ地蔵め!!」)ぱっくり割れて中から現れるのは…待ってました、捨之介登場です。ああ、染五郎氏も結構声高いのですねぇ。

 「アタシの目の前で女苛めるヤツは、許さないんですよ…!」

 真っ白な髪に白地の着物、琵琶を構えてすらりと立って…格好良いです! 格好良いけど…いいのかな、こんな登場シーンで(笑)
 そんな染五郎氏には古田さんのようなコメディタッチな捨之介は無理かな…と思っておったのですが、なかなかどうして、大したものです。 
「女苛めて良いのは俺だけだー!」
 叫ぶが否や琵琶から刀を取り出し、沙霧をばっさり…そんな無茶苦茶さもバッチリです。最初のシーンで歌って踊ってた人と同一人物だとは思えません。…いや、役の上では別人なのですが。
 さすがですねぇ……


 ところ変わってここ無界。きらびやかな電飾と共に、現れる無界の女たち。うわぁ、生聖子さんですよっ! 実は私、高田聖子さんの出演している舞台を生で観るのは初めてなのです。相変わらず……うん、色々と相変わらずで。危険な魅力というか、妖しさというか、やはりこういう役が似合いますねぇ。
 歌い舞っている太夫たちの所へ乱入してくるのは勿論、関八州荒武者隊……って、アンタらなんでクマに乗ってるんですか! しかももの凄く、愉しそうに!!
 …とか突っ込む前に、うっかり粟根さん演じる渡京に目が行ってしまい……渡京が舞台に居る間はずっと無意識に目で追っておりました。
 さり気に取り出した算盤片手に、金勘定する渡京さん。
 太夫をかけてvs捨之助戦(笑)「やってしまえー!」と言うが否や、とっとと舞台裏に引っ込み、沙霧を伴って再登場する渡京さん。

「俺はそろばんづくじゃなきゃ動かない!(カシカシっと算盤鳴らし) んんー、良い音だぁ!
 僕の友達は君だけだよ。そろばんころ助くぅーん!」

 そっ…算盤ですか? うわぁ、まさか粟根さんと算盤の組み合わせを生で見るコトが出来るなんてっ! '97版無界屋蘭兵衛でやったネタ再びですか! もしかしてもしかして、そろばん背負って戦ってくれたりしますか渡京さん!!
 …と、そんな期待感で頭が一杯で、実はこの辺よく覚えておりません。罪な人だよ、小田切渡京…

 そうこうしている内に、蘭兵衛登場。青の混じる髪を編み込み、目元にほんのり青メイク…白と青の羽織。火縄片手にゆっくりと現れます。おお…美人さんだ。格好ええですねぇ。
 想像しておったのよりは少々声が低かったのですが、身長が結構高いので、捨之介と並んだ時の絵がかなり良い感じです。
 そして天魔王……今回は髪の色の違いとかはないのですが、少々髪のボリュームが違います。ふむふむ…この辺の演出はアカドクロと変わらないのですね。

 天魔王去りし後、各々の決意を胸に、それぞれ舞台袖へ消える捨之助たち。ああ、今回は違和感なく見得切ってますね。
 さり気なく蘭兵衛を気遣う捨之助に、微妙にズレてる蘭兵衛の独白がなんだか切ない感じです。(捨之助「先走るなよ…蘭兵衛」  蘭兵衛「お前はいつまでも若造扱いだな…」)


 …と、ここまでがアカドクロの一幕だったので、今回もそうだろう…と思っていたら……
 あれ、終わらない!?


 暗転後、カツン……カツン…と響き渡る鎚の音。
 どこだか知れぬ洞窟の中、贋鉄斎が刀を打っております。傍らには弟子らしい人の姿が。
 鍛えた刀を翳して贋鉄斎曰く「美しい…刀はまこと、美しい…」ああ、相変わらずです。…と思いきや。
 その後を追って立ち上がったお弟子さん曰く「美しい……タナカはまこと、うつくしい」
 …タナカって誰やねん!(爆)

贋鉄斎「タナカではない!刀だ。刀こそまことに…」
弟子「タナカこそマコトに…たなかまこと!? 誰!?」
贋鉄斎「知らん!儂に聞くな!」
弟子「菊名! タナカマコトは菊名に住んでる……東横線だ(メモして満足そう)」

 …だ…誰かこの弟子止めてくれ…! 面白すぎます!!
 客席が笑い転げているところへ、殴り込みかけてくる関東髑髏党が一味。ちょいと頭の特徴的な男が格好つけて「やれ!」とか言うのですが…お弟子さんが鎚を構えて立ちはだかります。

 「解った…貴様らが東横線のタナカだな!」

 ち…違う…違うから……! シリアスなシーンなのにもう、これだけで笑い転げられます。それでいて緊迫感は失わない。これが新感線の舞台なのだなぁ…。
 敵のついでに親方もボカスカ殴りつつ、銃弾白羽取り(モドキ)でどうにかこうにか髑髏党を追い払った所へ(剛巌丸「戦ってるの全部弟子じゃないか!」贋鉄斎「それも師匠の器量のうちだ!」弟子「ウチダさん!?誰!?」)……息せき切って駆け込んで来る捨之介。どうやら予め鳩のぽっぽちゃんを飛ばして何やら頼んでおいた模様。
 ところがその、無二の親友だとかいうぽっぽちゃん。贋鉄斎のお弟子さんにこんがり焼かれ味付けされて食われております。(弟子「どうっすか?なかなかいい味出してますよ鳩のクセに!」 捨之介「……!! ぽっぽちゃん…!!」)
 暴れる捨之介。それを落ち着かせようと捨之介の頭に鐘を被せ、鎚で叩きまくる贋鉄斎…そりゃひどいだろう、とか思っていたら……あ、しっかり落ち着いてるし。
 鉄をも斬れる斬鎧剣と、100人斬れる刀を作れと……この辺は一緒ですね。
 ところがところが。
 例によって例のごとく、陽性砥石(?)にくっついた刀を引っぺがそうとする贋鉄斎を悲劇が襲います。刀を引っぺがしたは良いのですが、剥がした刀が贋鉄斎の頭に…!! あれよあれよと言う間に、贋鉄斎…お亡くなりになってしまいました。…ええ!?
 ちょっと待って100人斬りは!? とか心配していると、どうやらお弟子さんが頑張るようです。
 その名をカンテツ。今際の師匠にてんてん(→「゛」コレ)を貰い……曰く「ガンテツ」。
 「びよよよよ〜ん」とか言って、師匠の亡骸の隣ではしゃいでる場合じゃないですよ。ホラ捨之介もどうコメントしていいか呆れてるじゃないですか!(捨之介「お…おまえたち……」)
 ………なんか、好きだなぁ、カンテツ。(笑)


 そして一幕は締めに入ります。
 戦いの準備をする無界の女たちに、こぶしの忠馬と関八衆荒武者隊一同。太夫と沙霧の歌う歌をバックにゆるやかに場面は変わって……満月を背景に咲き乱れる白い花。そこに薄絹を纏った蘭兵衛が横笛吹きつつ現れ…。舞台上で風吹かせているのでしょうか、靡く薄絹がすごくすごく、幻想的です。
 邪魔をする非道丸の手下を、笛から取り出した短刀でざくざくと……わ、血飛沫の効果まであるのですか、今回は!

蘭兵衛「この笛は縁切りの笛…現ではなく、あの世とこの世のな」

 あの世とこの世…ですか。縁切り、とか聞くと、今回こそは……と、EDを期待してしまいます。
 舞台袖へ消える刹那、振り返って白い花を落とし置く蘭兵衛。
 そして赤く染まりゆく、白い花と月。


 …正直、一幕だけでもう、非常に満足感で満たされておったのですが(笑)
 休憩を挟んで、舞台は二幕へ続きます。



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それぞれの役者さんのこと