劇団新感線 髑髏城の七人〜アオドクロ  観劇レポートもどき(後編)

2004.10.09 劇団☆新感線 秋公演:髑髏城の七人〜アオドクロ(日生劇場 18:30〜 公演)
※ネタバレ注意!
※記憶だけで書いているので、一部科白等が間違っている可能性があります。今回は台本売ってたのですが、なんか科白が違うのですよ…

●二幕
 青い月光に響く鼓と弦の音。ゆっくりと上がる幕の奥で、大きな満月をバックに天魔王が鼓を。さすが歌舞伎役者、絵になります。鼓の打ち方も堂に入っております。(この後お付きの女性に鼓を渡し、女性が鼓を鳴らすのですが…こう云うのも何ですが、情けない音しか鳴らないのです。さすがですな…)
 そこへ現れる、誰の差し金か謎の覆面刺客。
 「駿府の狸か、浪花の猿か。いずれにせよ獣面人心の奸物共が…」
 言うに事欠いて獣面人心…ですか(笑) いや間違っちゃいないと思いますけれども。
 扇構えてびしりと立つその佇まい。あああ、美しい!! 立ち姿が絵になる役者さんはホント素晴らしい! 惚れ惚れしてしまいます。
 そして戦いつつ唄うは…敦盛の舞ではないですか! かの有名な「人間五十年…」というヤツです。そういえばそうですね、信長公といえば敦盛の舞。考えて見れば、今まで出なかったのが不思議です。しかし、ロック調の音楽と歌舞伎の舞唄をこれほど鮮やかに調和させるとは。
 いやいや、それよりも。
 やはり本業ですかねぇ。扇を構え、舞い、鮮やかに敵を薙ぎ倒す姿。憎むべき(?)天魔王とは言え、うっとりしてしまいます。
 無粋な血で月を汚した、と一人ごちる天魔王。そこへ現れる部下の一人。蘭兵衛が来ている、その知らせに天魔王は急ぎ足で戻ってゆきます。
 いや…何もそんなに慌てなくたって。

 場所は変わって髑髏城天守閣。白い薄絹を纏った女性たちに導かれ、蘭兵衛登場。前を歩く女性陣より綺麗だとか思ってしまったのは私だけでしょうか。いや多分皆さん思っていたはず。綺麗な緑と青の着物に、薄絹羽織。雰囲気がすごい、綺麗なのですよ…!
 そこへ早足で戻ってくる天魔王。蘭兵衛の話も聞かずと、いきなり日本情勢の解説をはじめてくれます。って、地図にまたプロジェクター使ってます。「此処が髑髏城。……秀吉が陣を構えるとしたら…」と、言葉に合わせて映し出される地図が動いてゆきます。さすがに此処までくると人間離れもいいとこですな…うぅむ。
 鉄砲三百挺と引き替えに、無界の里と女たちの命を、と言う蘭兵衛。命乞いかと一笑する天魔王を撃とうと火縄を構えますが……

天魔王「私を撃つか。撃って自分も死ぬか。そんな事の為に殿はお前の命を救ったのか!」

 …痛いトコつくなぁ。案の定躊躇する蘭兵衛からアッサリと火縄を取り上げ、代わりに差し出すは天魔王の仮面。信長公の髑髏より作ったというその仮面に狼狽える蘭兵衛…錯乱しかけてますが……ええと何だかその、BGMとも合間って(『ともに抱いた夢幻と その身に流れる燃ゆる血潮を…』)無闇やたらと妖しげな演出が強化されております。名も無き天魔王の手先に抱きつく蘭兵衛…いやアンタ抱きつく相手違うから!天魔王も女性侍らせてる場合じゃないでしょうが!…とか思っていたら。
 倒れ伏した蘭兵を膝上に抱え込み(天魔王「私が欲しいのは…お前だ。森蘭丸」)、夢見酒を口移……って、口移しー!!?
 いやあの…実は春公演アカドクロでも同じ演出があったのですが、アレは相手が水野さんで女性だったからじゃないのですね……う わ ぁ。
 良いモノを見ました(笑)

 ゆらりと立って、残りの酒を飲み干す蘭兵衛。そこへ駆け込んでくる沙霧。
 斬りかかる蘭兵衛に、一幕の終わりで彼が落とし置いた白い花を掲げますが、それはアッサリと切り落とされ……うう。切ないなぁ。

 沙霧「蘭兵衛!」
 蘭兵衛「(落ちた白い花を拾い上げ)その男なら…もう居ない」

 説得(?)にも応じず、白い花を口に銜えて斬りかかる蘭兵衛にキレて、抜け道から逃げ出した沙霧。そこへ現れた捨之介を天魔王と勘違いして……と、この辺もあまり変わりませんねぇ。
 アカドクロでの古田捨之介が醸し出していたエロオヤジっぷりは、今回どうなるんだろうと半ば期待、半ば心配してみていたら。

捨之介「よしよし……うむ、あと五年ってトコだな」
沙霧「ぇ…? な、何が…?」
捨之介「そのくらいが食べ頃なんだよ。お前の」
沙霧「ばっ…ばかー!(殴)」

 そう来るか!(笑)
 その後、「もう…バカじゃないの…!」とか言いつつ後ろ向いてぐしぐし涙拭ってる沙霧は相当可愛いかったです。そりゃぁもう、捨之介じゃないですがヨシヨシと抱き締めたくなるくらいに。
 はたと我に返って逃げだそうとするところへ現れる天魔王の追っ手。そんなところで昔話とかしてるからだ!(笑)
 ついでっぽく現れた渡京を捨之介が口先三寸で丸め込み、沙霧と共に逃がして…鬼龍丸たちの攻撃を交わして自分も逃げようとしたところへ、天魔王と蘭兵衛が再登場です。
 おぉ、蘭兵衛がいつの間にか鎧着てますな。天魔王と同じ色の、白っぽい鋼の鎧。同じく鋼の手甲に具足。(…と書くと和風ですが、ガントレットとかグリーヴとか書くのも気が引けるので/笑)編み込んでいた青混じりの髪を綺麗に解いて梳かして流して…髪艶に目を奪われる私。(やっぱり長髪好き)
 …とか見惚れてるうちに…蘭兵衛の斬撃に倒れ、囚われの身となる捨之介。

 捨之介「蘭兵衛……目を醒ませ…!」
 蘭兵衛「今度こそ私は天と共に生きる。お前には、解らぬよ…捨之介。…お前には。」

 なんだか…えらい擦れ違いようですね、この二人。見ていてどちらも哀れ…(涙)
 もう少し、互いが互いを理解して、もっと近く感じて居たらこういうコトにはならなかったかもしれませんが…それでもやっぱり、変わらないような気もします。と、こんな所で物語の流れと構成に感心してしまう私はやっぱり、演劇人以上に物書きなのですね。


 話が逸れました。
 沙霧を連れて逃げ出した渡京さん。何とか無事に無界の近くまで辿り着きます。そこで何故かバナナを持った忠馬と鉢合わせ…良かった〜!と思いきや、「渡京てめぇ!」とか言われてボコられる渡京さん。沙霧が慌てて止めに入ります。(「一応命の恩人なんだから!」)殴られて倒れたままピースサインしてる彼はやっぱり素敵です。色んな意味で。
 そこへ現れる天魔王の部下が一人・乱の剛厳丸。焼き鳥魔神(=鋼の鬼龍丸)とやたら仲が良い彼です。無謀にも戦おうとする渡京さんと、何故か守られっぱなしの沙霧。バナナを片手に一人奮闘する忠馬。そろばんで剣受けとめるなよ渡京さん…!
 そこへ現れるカンテツ…改めガンテツ。現れるなり「臭い! お前たちはとてつもなく臭い!!」
 いくら何でも、そりゃないだろうよ。(笑)挙げ句、「またこんな所で悪さしやがって、東横線のタナカ!」
 またタナカかい!
 これが繰り返しのギャグってやつですね。良いキャラしてるよカンテツ…。
 あんまりな物言いにキレたらしい剛厳丸とその一味をアッサリ倒し(カンテツ「お前たちのタナカの刃は全部潰した! それはただのタナカ棒だ!」)、ぐるりと辺りを見回して。

カンテツ「ここが無界の里だな…。(沙霧に)ウチダさんいるだろ!」
一同「…は?」
カンテツ「あ、マチダさん!?」

 ウチダさんもマチダさんもいませんよ!!(爆笑)
 まさか一幕のギャグがここまで引っぱられるとは……今回一番のヒットです。カンテツ。ええなぁ…。  捨之介に言われて斬鎧剣を届けにきたと言うカンテツ。おお、ちゃんと言えてるじゃないですか。タナカじゃなくて。
 そこへ遠く響き渡る悲鳴。一同は慌てて無界の里へ駆けてゆきます。


 場面は変わって無界の里。太夫は無事か!?と思いきや…あれれ。なんだか歌って踊って…ノリノリですな。どうやらちょいと時間の巻き戻しがあったようです(笑)
 一曲歌って踊ってびしっと決め…損ねたところへ、戻ってくる関八衆荒武者隊の一人、うなずき才蔵。なんだかこのお人、荒武者隊の中では一人浮いておるなぁ、と思っていたら…何でも忠馬(忠太)が昔斬った侍の親に仕えていた武士だったとか。(ややこしい)
 忠馬が百姓を止めて村を飛び出していったのは、大兄貴こと仁平さん曰く、村で悪さした侍叩っ斬たのが原因だとか。
 …で、その仇討ちとして忠馬と出会い、その心意気に惚れ込んでしまったというわけですな。ふむふむ。こんなところで伏線が。ええお人だ、才蔵さん…!
 ところが。何やら褒められて照れ隠しに大将(忠馬)を探しに立った才蔵さんを、蘭兵衛の撃った石弓の矢が襲います。えええ! 今感動したばっかなのに!? ってか可哀相過ぎませんかこの扱い…!!
 そんな情緒には構わず、天魔王と二人して無界の里を荒らしまくる蘭兵衛。串刺しにした太夫たちの首から血飛沫が散ったりと、今回かなり凄惨な様を呈しております……うぁぁ(涙)
 矢傷に絶えつつも奮戦した才蔵さんも天魔王に斬られ、首を落とされ…(生首のダミーヘッドがあるのですよ…! えらく生々しい)
 そこへ駆け込んでくる沙霧と忠馬、それに渡京さん。とカンテツ。
 ついでに狸穴二郎衛門まで現れ……お、正体判明しましたな。三河殿…と呼ばれる狸穴二郎衛門…徳川家康です。
 多勢に無勢と見たのか、さすがの天魔王も一旦撤退します。去り際に無界に火を放って。(まったくなんてヤな奴だ!)


 そして物語は佳境へ…
 …と、その前に。
 97年度版髑髏城、そしてアカドクロでは無かったシーンの追加があったのです。(90年度版のは、残念ながら見た事がないのでわかりませんが)

 髑髏城の一間。捨之介の囚われている座敷牢。
 静まりかえったそこに、何故か現れる蘭兵衛。辺りをうかがいつつ牢に近付き…帯に挿していた白い花を投げ入れ……気がついた捨之介に「無界の里は私が焼いた」と告げてそのまま走り去ります。
 どうも私、彼が解らなくなってしまいました。未練を断ち切りたいのなら花なんか投げ入れないでしょうし。うぅん。
 悩んでいるうちに、捨之介脱出に成功。蘭兵衛の投げ入れた白い花を口に銜え、そのまま後を追って走り去ります。頑張れ捨之介!!


 …大分長くなってしまったので、この辺から一部ダイジェストでお送りします(笑)


・渡京&沙霧 vs 鬼龍丸
 襲いかかる鬼龍丸に余裕の表情な渡京。「で き る か な?」とか余裕綽々の様子に、あちゃー…って顔してる沙霧。そりゃぁ不安にもなりますわなぁ。案の定あっさり叩きのめされる渡京さん。
 「俺ってば滅茶苦茶弱いじゃないかー!」…とか狼狽えておきながら、その後即裏切って「鬼龍丸のお殿様、見事沙霧を捕らえて参りました」
 …いや…もう、素敵過ぎて声も出ません。(笑)
 そんな底の浅い芝居に騙されるか! と鬼龍丸に切り捨てられ、今度は沙霧を捕らえ。

渡京「動くな!一歩でも動くと、この女の命はないぞ!」
鬼龍丸「なくてかまわん!」
渡京「え?」
沙霧「もう何もかも見失ってるぞ渡京…」

 トドメだ!とばかりに腕に仕込んだ銃を構えて撃つ鬼龍丸。ところが、暴発! どうやら渡京が先程裏切ったフリして腕の銃にすりすりしてた時に(笑)そろばんの玉を銃口に詰めたようです。(渡京「俺のそろばんの玉は粘着質だ!」)
 そこへ現れるカンテツ…そしてそして!!
 出ました、巨大そろばん!!(大喜) 名付けて「ジャンボころ助くん」!(カンテツ作)
 先程までの及び腰はどこへやら、鮮やかな動きで鬼龍丸を叩きのめす渡京さん。か…格好ええ…! そろばんだけど格好ええ!! 分かってたことですが!

沙霧「渡京! お前すごいな!」
渡京「お前、俺が負けると思っていたろう…」
沙霧「え……」
渡京「その予想を、必死で裏切ったんだー!」

 どこまでも裏切りなんですな、渡京さん…。そんな貴方が大好きです(笑)


・忠馬(+仁平) vs 刃の非道丸
 甘い夜の声をした(笑)非道丸。(「この城は…(ついと髪整え)俺が守る」)相変わらずええ声してますな、川原さん。
 さすがに拳じゃ敵わないと見た忠馬。コイツで勝負だ!とばかりに刀鍛冶に力の限り研いで貰ったという「荒武者雷光剣」を抜くと……ありゃ、薄い!? なんかぺらっぺらのリボンみたいなのが出てきたんですが!(笑)

非道丸「なんだそのカツオブシみたいなのは」
忠馬「うるせぇうるせぇ!刀鍛冶が限界まで研いだらこうなったんだ!」

 カツオブシ…(笑)
 そのままバレリーナのように戦おうとする忠馬のノリに、うっかり乗りかける非道丸。手先ひらひらさせて……はたと我に返ります。(非道丸「アホかー!!(蹴)」)忠馬ピンチ! しかしそこへ現れる男! 誰だ!

仁平「必殺……イモ掘り鍬」

 大兄貴、やっぱりアンタか! 今回は鎌でなくて鍬なのですね。ぐるんぐるんと何度も回転させるその手つき、非常に鮮やかです。いかん…格好ええ!!
 仁平の投げ渡したMy鎌を構えて勇気百倍な忠馬。「必殺戻り鎌」とやらで非道丸にトドメを……とどめ……
 スローモーションで空を舞う鎌。剣を構える非道丸。

 「スポーン!」(ヅラ(非道丸の)が取れた音)

 …頭の毛だけ飛ばしてどうすんだー!!(爆)
 綺麗にハゲになった非道丸。さすがにショックだったのか(「お…俺がこんな…か、鎌とか、鍬とか……うわぁぁぁぁぁん!」)そのまま撤退してしまいました。哀れ……(震笑)
 川原さん…すっかりお笑いキャラですね…。二枚目だと思ってたのに…固有ネタ作ってしまったのですね…いや、そんな貴方も素敵ですよ!(笑)


 そしてそれぞれが向かう先は天守閣…。物語は終盤へ。

 ……と、感想はここまでにしておきます!(また…)
 ここまでネタバレしておいてなんですが、やはり最後は御自分の目で、御覧になってください! 後半年もすればDVDになりますから!(笑)


 一つだけ言うと…

 97年度〜アオドクロまで、EDは変化していないのです。(90年度版は存じませんので、すみません…)
 誰が死に、誰が生き残るかも。
 ただ、今回のアオドクロを観て…漸く自分なりに納得が行った気がします。
 蘭兵衛の想い、捨之介の想い。擦れ違ったわけでもないのだけれど、どこかで何かがひとつ、足りなかった、ただそれだけ…な気がします。

 「髑髏城の七人」
 やはり、名作ですね。

 余談ですが、2004年は「ドクロイヤー」だそうで(笑)
 言われてみれば、確かにすっかり「髑髏城」に染められた一年(実際は半年くらいですが)でありました。
 うむ、満足!!



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