決戦前夜 scene5:sephiroth
Final FantasyZ
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 目の前で、白い焔が燃えている。
 ホーリー…星を救う最後の望み──彼にとっては最大の障害物。だが…

 (力無き古代種の祈り…生命無き者の望み…他愛もない)

 自らの招き寄せる強大な力に比べれば、たった一人の既に生命無き者の祈りなど、何の役にも立ちはしない。
 それよりも今は、自分を倒そうとする人間がいることの方が重要であった。

 セフィロス・コピー・インコンプリート ナンバリングなし
    クラウド・ストライフ…          魔晄を浴びた者。

 彼に何か思い入れがあるわけではない。けれど、ただ愉快だった。
 そう…セフィロス・コピーとして機能したのは彼だけで、そしてまた、自分に表立って立ち向かう気を見せた者もまた彼だけだったから。

 「疾く来い…私の人形──」

 呟いた唇が、魅惑的な、だが危険な笑みを形作る。
 この地に残したものは何ひとつ無い。ジェノバ──母は自分であり、自分が母であった。父の存在などに興味はない。
  星と一つになること。いや…自分が星となり、すべてとなる事以外に、もはや彼の興味は無かった。
 だが──

 イツカラ、コウナッタ…?

 囁きが聞こえる。
 消えいるほどに幽かだが、羽虫の唸りの様に耳に絡み付いて離れない、そんな囁き。

 セフィロス…イツカラ、コウナッタ…

 整った眉が顰められ、形の良い唇は不機嫌そうに微笑みをかき消す。翡翠色の瞳がすっと細くなると、すべてを凍てつかせるような冷酷な色を湛えた。

 (誰だ…)

 声は、途絶えた。
 彼は少しの間辺りを詮索するように動きを止めていたが、やがてどうでも良いと言うように顔を上げた。
 見開かれた瞳は磨きぬかれた狂気、その唇に浮かぶのは妖艶な死への誘い。

 (クラウド、私の人形…疾く──来い。その血でその行為を贖うが良い…)

 淵の底で待つのは、死神か…悪魔か…



Estvans interius ira vehementi...

Sors immanis et inanis...

Veni,veni,venias,ne me mori facias...


for Last battle...





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